研究課題
本研究では、虚血性心疾患(安定狭心症・不安定狭心症・急性心筋梗塞)患者のカテーテル治療中に得られる組織(プラーク・吸引血栓)の性状と臨床像・各冠動脈イメージングデバイスとの対比を行った。これにより治療中の合併症を起こしやすい、予後が悪い(死亡率の高い、再入院しやすい)患者の抽出や、急性冠症候群(不安定狭心症・心筋梗塞)の病態解明に寄与することを目的としている。令和2年度は、前年度に引き続き急性冠症候群患者の吸引血栓・アテレクトミーサンプルの収集を継続しつつ、その病理組織学的所見と臨床像・冠動脈イメージングデバイスとの対比を行った。その結果、近赤外線分光法・血管内超音波検査(NIRS/IVUS)の検討にて急性冠症候群患者の冠動脈は責任病変だけでなく、非責任病変にも脂質に富んだ不安定な(発症しやすい)病変を多数認めており、HMGCoA還元酵素阻害薬(スタチン)とezetimibeを組み合わせた強力な脂質低下療法により、その不安定性が改善する可能性を示した。さらには、非侵襲的な冠動脈CT検査と侵襲的なNIRS/IVUS検査との対比により、冠動脈CTのCT値(< 32.9 Hounsfield units)とリモデリングインデックス(≧ 1.08)との組み合わせが、NIRS/IVUS上の脂質に富んだ不安定な動脈硬化巣と強く相関していることを明らかにした。これは冠動脈CTが、非侵襲的に将来急性冠症候群を発症するかもしれない不安定な患者の同定に有効な可能性があることを示している。また、急性冠症候群患者の治療中に得られた吸引血栓サンプルの病理組織学的な解析により、動脈硬化巣が破綻して血栓形成・増幅(病態悪化)するための局所の接着分子としてはフィブリン・フォンビルブラント因子が重要な役割を担っていることを明らかにした。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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