研究課題/領域番号 |
18K08125
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
小倉 正恒 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30532486)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HDL機能 / コレステロール搬出能 / 家族性高コレステロール血症 / リン脂質 / 脂肪酸側鎖 / 冠動脈疾患 |
研究実績の概要 |
遺伝学的に証明された家族性高コレステロール血症患者のうち、若年性ASCVD患者12名と冠動脈疾患未発症者17名のHDL分画(血漿をPEG沈殿して得た)を共同研究先(九州大学・生体防御医学研究所)に送付し、超臨界流体クロマトグラフィ・質量分析法(SFC/MC)によりHDL分画中のリン脂質について脂肪酸側鎖の違いまで含めて測定を依頼した。測定結果について、搬出能および冠動脈疾患との関連を検討し、ASCVD患者でその血中濃度が高く、かつ搬出能と負の関連を示すHDL分画中の悪玉脂質を探索した。合計215種類の脂質を定量できた。すべての測定できたリン脂質が患者のHDL-C濃度と正に関連してしまうため、各脂質クラスの総量に対する比率をパラメーターとして採用した。 搬出能およびASCVDの有無との関連を検討したところ、概してphosphatidylcholine (PC)やphosphatidylethanolamine (PE)、sphingomyelin (SM)やcholesterylester (CE)は搬出能と正に関連し、ASCVD患者でその血中濃度が低い、いわゆる「善玉脂質」と考えられた。逆に、Lyso-PCおよびLyso-PEは搬出能と負に関連し、ASCVD患者でその血中濃度が高い、いわゆる「悪玉脂質」と考えられた。phosphatidylinositolやCeramides、diacylglycerol、triacylglycerolは一定の傾向を示さなかった。 興味深いことに、多くが善玉脂質であるPCとPEのうち、「PC 18:0-20:4/Total PC」および「PE 18:0-20:4/Total PE」は、搬出能と負に関連し、ASCVD患者でその血中濃度が高いため「悪玉脂質」である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族性高コレステロール血症患者の血漿からHDL分画を得、リピドミクス解析により、HDL機能と負に関連し、ASCVD患者で濃度が高い「HDLを悪玉化させる候補脂質」を複数同定できた。おおむね研究計画書通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の成果から、ホスフォリパーゼA2(PLA2)などによりリン脂質のsn-2位のアラキドン酸が切断され、その代謝産物(エイコサノイド等)が搬出能低下を介して動脈硬化プラーク形成進展に寄与している可能性が考えられる。したがって、アラキドン酸カスケードの下流の酵素や脂質メディエーターおよびその受容体、またPCやPEにアラキドン酸を導入する酵素なども創薬ターゲットとして有望かもしれない。今後は上記HDL分画の脂質メディエーター(アラキドン酸カスケードの下流に位置する物質など)の測定、アラキドン酸やその下流の脂質メディエーターとコレステロール搬出反応との関連を探る細胞実験などを進めていく。また脂肪酸を細胞内外で運搬する脂肪酸結合タンパクやその阻害剤などを用いた実験も進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の旅費について、他の研究費で賄ったため。
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