研究実績の概要 |
肺疾患合併肺高血圧症(L-PH)における肺血管と心臓(右心系)の形態・機能解析を行った。病理学的検索では、肺血管のリモデリングと同時に肺血管拡張薬の標的蛋白質の局在を解析・検証した。 病理学的解析で得た新知見として、R-PHではPHを伴わない肺疾患症例と比較し、線維化が中等度の肺領域で肺動脈血管リモデリング(内腔狭窄)が強いことをあきらかにした。一方で、静脈病変では2群(R-PH群およびPH非合併肺疾患群)間に差はなかった(2021年肺高血圧・肺循環学会で発表予定)。この結果は、肺疾患症例の一部でのみ合併するPHの発症メカニズムの解明に有用な知見である。また、この研究はバーチャルスライドを使った定量解析の有用性を示すものでもあり、将来的には小血管や毛細血管の解析などへの応用を通じてさらに発展が期待されるものである。 臨床的には右室内圧波形解析と心臓MRIの併用により右室・肺動脈カップリング障害が肺動脈性肺高血圧症の予後不良因子であることを日本人では初めて示した(Nakaya et al., Pulm Circ. 2020 Oct 5;10(3))。さらに3D心エコーとMillarカテーテル検査の同時施行により右室内圧・容積ループ波形を描くことに成功し、海外誌に発表した(Nakaya et al., Echocardiography. 2021 Mar 28)。また、R-PHの全国レジストリーへの症例登録を進め、結果はCirc J誌に掲載された(Tanabe et al., Circ J. 2021 Mar 25;85(4):333)。 これらの成果は、R-PHを含む肺高血圧症の発症機序の解明、病態の理解、ひいては治療・予後の改善に繋がりうるものである。
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