BETファミリータンパクはブロモドメインの繰り返し配列を持つタンパクで、遺伝子発現を制御する働きを持つ。近年、BET阻害剤が癌治療へ応用されつつあるが、その作用機序については不明な部分が多い。そこで、我々は乳がん、肺癌、ナットカルシノーマの細胞株を用いて、作用機序を明らかにすることとした。上記細胞株へ、BET阻害剤であるJQ-1やOTX015を投与し、コントロールの無治療の細胞株とで、RNAの発現解析を行うこととした。BETファミリータンパクはエピゲノムに関与することで知られている。そこで、我々はエピゲノムに関わる分子機構として重要なmicroRNAに注目し、microRNAの発現プロファイルを重点的に解析することとした。 そこで、我々は次世代シークエンサーによるmicroRNAの発現解析を行なったが、乳がん、肺癌、ナットカルシノーマの、いずれの細胞株においてもBET阻害剤治療群と無治療群とで、microRNAの発現プロファイルに一定の傾向や共通する違いが認められなかった。当初の予想とは異なる結果であったことから、次の研究段階として、BET阻害剤の耐性株および感受性株とで、microRNAの発現に差が認められないかを検討した。このため、上記細胞株のJQ-1およびOTX015に対する耐性株を作製することとし、一部の細胞株で耐性株を作製することに成功した。 耐性株と親株のmicroRNAプロファイルを同様に比較したところ、一部のmicroRNAで発現に一定の傾向で差を認めることを見出した。この成果をもとに、候補のmicroRNAとBET阻害剤との関連を調べるべく、更なる実験計画を設けることとしている。
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