研究課題/領域番号 |
18K08133
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡崎 達馬 東北大学, 大学病院, 講師 (40396479)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リンパ管新生阻害 / 血管新生阻害 / 免疫療法 / 腫瘍 |
研究実績の概要 |
これまで癌免疫療法への治療抵抗性の主な原因として、癌攻撃性の免疫細胞が癌内に浸潤しない事が挙げられている。このため癌への細胞浸潤を制御する癌微小環境と癌免疫との関係が注目されている。私はこれまで癌免疫療法に抗リンパ管新生療法と抗血管新生療法を併用するとその効果が強まる事を発表している。これは抗リンパ管新生療法や抗血管新生療法により、正常に機能していなかった腫瘍血管や腫瘍から流出するリンパ管の機能が改善し、癌の微小環境が免疫抑制性から免疫支持性に改善したためだった。実際この微小環境の改善により、癌攻撃性の CD4 陽性及び CD8 陽性 T 細胞の腫瘍内浸潤数が増加した。具体的には癌免疫療法として抗 death receptor5 抗体(抗 DR5 抗体)を用いた。抗 DR5 抗体は癌細胞に細胞死を誘導し、さらに癌細胞に対する特異的な CD4 陽性及び CD8 陽性 T 細胞を誘導する。抗リンパ管新生療法及び抗血管新生療法としては両者の成長因子を標的とする sunitinib を用いた。ここで通常量を投与すると血管を退縮させてしまうため、機能改善目的に通常量の60%を投与する。本研究ではさらに癌免疫療法を強化するため、抗 DR5 抗体とは別の機序をもつ以下の癌免疫療法を各々加えた。1)抗 CD40 抗体による樹状細胞活性化、2)抗 CTLA-4 抗体による T 細胞活性化、3)免疫抑制系制御性 T 細胞消去、4)免疫抑制 CD11b 陽性 Gr1 陽性細胞消去。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗DR5 抗体にT 細胞活性化を併用するともっとも強い抗腫瘍効果をもたらした。しかし、腫瘍の成長曲線を抑制はしたが、腫瘍を消滅はさせなかった。そこで更に免疫療法を強化した。免疫抑制系制御性 T 細胞と免疫抑制CD11b陽性Gr1陽性細胞の両者を消去し免疫を活性化した。すると更に腫瘍の成長曲線を抑制した。現在、成長した腫瘍を癌免疫療法と抗リンパ管新生療法と抗血管新生療法併用で消去できるか、その条件設定を行なっている。また、腫瘍は背中に移植して成長させているが、流入血管やリンパ管、浸潤細胞等を詳細に観察できる腫瘍モデルの作成を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
癌を栄養する血管やリンパ管内を移動する免疫細胞を同定しやすくするため、腫瘍に流入し、流出する血管やリンパ管がはっきりと顕微鏡で同定できるマウス腫瘍モデルを作成した。今後は本モデルも用いて血管やリンパ管、浸潤細胞を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と今年度は当該科研費を用いての国際学会への出張や論文出版の費用を計上しなかったため、次年度使用額が生じた。
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