研究課題/領域番号 |
18K08139
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
際本 拓未 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80724773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HAS2 / 高分子量ヒアルロン酸 / TLR4 / マウス / 喘息 / COPD |
研究実績の概要 |
本研究は、当研究室が独自に発見した新規喘息感受性遺伝子HAS2が、高分子量ヒアルロン酸等を介し気道炎症を制御するメカニズムを、HAS2欠損マウスを用いて解明する。その成果はこれまで未知であったHAS2機能異常を有する喘息患者群の表現型解明、バイオマーカーの開発、および他の炎症性肺疾患への新規治療アプローチの創出といった臨床応用へと展開する基盤となるものである。 2018年度は、HAS2ヘテロ欠損マウスを用いた好酸球性気道炎症病態増悪の有無と表現型の解明を試みた。その結果、OVA刺激による急性好酸球性気道炎症モデルにおいてHAS2ヘテロ欠損マウス群は高度の好酸球性気道炎症が誘導され、Th2および炎症性サイトカイン・ケモカインが有意に高値であった。次世代シーケンサーによる網羅的な解析(RNAseq)を実施ししたところ、HAS2ヘテロ欠損マウスにおいて筋収縮機能やアポトーシスに関連した経路が抑制されており、HAS2の機能異常が好酸球性気道炎症の増悪や気道過敏性亢進に作用し喘息病態をきたすことが示唆された。 2019年度はRNA-seq解析でHAS2ヘテロ欠損マウスにおいて指摘された筋収縮機能異常が気道過敏性を亢進していること。気道炎症病態下でHAS2ヘテロ欠損マウスはHas2及びヒアルロン酸結合蛋白の発現が低下していることを確認し、ここまでの成果を踏まえ論文投稿を行った。また、並行して解析を行っている慢性好酸球気道炎症モデルでの検討でもHAS2ヘテロ欠損マウスは高度の好酸球性気道炎症および杯細胞過形成を認めた。また、エラスターゼ投与による肺気腫形成モデルにおいても、HAS2ヘテロ欠損マウスは高度の気腫形成を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた。野生型マウス・HAS2ヘテロ欠損マウスでの急性好酸球性気道炎症病態の検証は論文投稿を行っており計画通り実施できている。また、慢性好酸球性気道炎症に伴う気道リモデリングについては気道平滑筋肥厚の有無や気道過敏性の評価では差が出なかったもののHAS2ヘテロ欠損マウスは高度の好酸球性気道炎症および杯細胞過形成を認め、今後はRNA-seqデータの検証等さらなる病態解明を進めている。さらに、エラスターゼ投与による肺気腫形成モデルにおいても、HAS2ヘテロ欠損マウスで高度の気道炎症および重篤な気腫形成を認めており、仮説のとおり、HAS2の機能異常が多くの炎症性肺疾患において脆弱性を示す可能性を示唆された。以上より、概ね計画通りに進められているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画3年目である2020年度は、これまでの成果を踏まえ、まず、急性好酸球性気道炎症モデルでのHAS2機能異常が病態に及ぼす影響について年度内の論文化を目指す。慢性好酸球性気道炎症に伴う気道リモデリングモデルについては形態計測・気道炎症の評価は終了しているため、別途採取した血清についてはtotal IgE, OVA特異的IgE, 等の免疫グロブリン測定を施行し全身性の変化の有無を検証する。RNA-seq解析データの検証を進め、急性炎症モデルでは検出困難であったヒアルロン酸分画の変化の検証・糖鎖解析の実施を考慮する。さらにHAS2機能異常が炎症性肺疾患に広く影響する可能性を検証するため、当初の計画通りエラスターゼモデルでの解析も併せて進める。 上記の、中間成果報告として次年度の米国胸部疾患学会や日本呼吸器学会総会、日本アレルギー学会での成果報告および複数報の論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として計上された76,911円については本来、本研究計画の研究成果報告として参加を予定していた2020年5月の米国胸部疾患学会(ATS2020)の参加事前登録費として計上していた。が、本年に入り世界的に流行しているCOVID-19の影響により、3月末になりATS2020そのものが中止となったため、2019年度の予算では振り替えが間に合わずやむなく基金部分を最終年度へと繰り越しとした。 本繰り越しに関しては、より詳細な解析を行うための試薬費および開催が延期となった日本呼吸器学会等の成果報告時の旅費に充当する計画である。
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