研究課題
本研究は、当研究室が独自に発見した新規喘息感受性遺伝子HAS2が、高分子量ヒアルロン酸等を介し気道炎症を制御するメカニズムを、HAS2ヘテロ欠損マウスを用いて解明する。その成果はこれまで未知であったHAS2機能異常を有する喘息患者群の表現型解明、バイオマーカーの開発、および他の炎症性肺疾患への新規治療アプローチの創出といった臨床応用へと展開する基盤となるものである。2018年度は、急性好酸球性気道炎症病態増悪の有無と表現型の解明を試みた。その結果、OVA刺激による急性好酸球性気道炎症モデルにおいてHAS2ヘテロ欠損マウス群は高度の好酸球性気道炎症が誘導され、Th2および炎症性サイトカイン・ケモカインが有意に高値であった。次世代シーケンサーによる網羅的な解析(RNAseq)を実施ししたところ、HAS2ヘテロ欠損マウスにおいて筋収縮機能やアポトーシスに関連した経路が抑制されており、HAS2の機能異常が好酸球性気道炎症の増悪や気道過敏性亢進に作用し喘息病態をきたすことが示唆された。2019年度はRNA-seq解析でHAS2ヘテロ欠損マウスにおいて指摘された筋収縮機能異常が気道過敏性を亢進させていること。気道炎症病態下でHAS2ヘテロ欠損マウスはHas2及びヒアルロン酸結合蛋白の発現が低下していることを確認し、ここまでの成果を踏まえ論文投稿を行った。2020年度は前年度に投稿した急性好酸球性気道炎症モデルの追加実験を実施し、Allergy誌に採択された(doi: 10.1111/all.14715.)。また並行して検証を行っている慢性好酸球性気道炎症モデルおよびエラスターゼによる肺気腫モデルを用いた検証では、両モデルともHas2機能異常群で有意に重症化・難治化を認め、小胞体ストレス応答異常の可能性も示唆された。今後さらなる解析を行い、学会誌等で成果報告を行う予定である。
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Allergy
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10.1111/all.14715.