研究課題
間質性肺炎は肺組織での不可逆的な線維化を伴い予後も極めて悪い。また、既存の治療薬の効果は充分でなく、新しい治療薬の開発が急務である。間質性肺炎の 発症機序においてTGF-betaの重要性が知られているが、生体内でのTGF-betaの活性化制御機構は未だ不明である。線維化の構成成分である細胞外マトリクスタン パク質の一部は、細胞表面上受容体に結合し細胞機能を調節する、マトリセルラータンパク質と呼ばれている。我々は、マトリセルラータンパク 質の一つであ るペリオスチンが細胞膜上のインテグリンを介して間質性肺炎における肺線維化において重要な分子であることを明らかにしてきた。しかし、ペリ オスチンを 介した肺線維化の機序には不明な点が多い。本研究では、ペリオスチンとTGF-betaのクロストークによる新規の肺線維化機序を明らかとすること、間質性肺炎に 対する新たな治療戦略を構築することを目的としている。肺線維化の発症機序の解明においては、ペリオスチンとTGF-betaのクロストークに関する解析を行っ た。間質性肺炎に対する治療戦略の構築においては、間質性肺炎モデルマウスに対するペリオスチン阻害剤の効果に関する検討を行った。その結果、インテグリ ンに対する阻害効果が期待される20種類の薬剤のペリオスチン―インテグリン間の結合に対する効果の比較検討を行い、5種の薬剤が有為に抑制することを見出 した。 前述の5種の薬剤の1つであるCP4715がペリオスチン―インテグリン間の結合を特異的に阻害する効果を有したことから、CP4715を間質性肺炎モデルマウスに投与する実験を行った。CP4715をマウスの皮内に投与し、持続的な効果を期待できる浸透圧ポンプを用いた解析した結果、疾患の抑制効果を示すデータが幾つか得られ、研究成果がアメリカ胸部疾患学会の専門誌(AJRCMB)に掲載された。
すべて 2020
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American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology
巻: 62 ページ: 204 216
10.1165/rcmb.2019-0245OC