研究課題
特発性肺線維症(IPF)は予後不良の難治性疾患であり、コラーゲンの過剰な集積が主要な病態である。我々は、コラーゲン特異的分子シャペロンであるHSP47が各種線維化疾患において線維化進展を促進し負の生理作用をもたらすことを実証してきた。しかし、HSP47の発現や機能を抑制する低中分子化合物に着目した薬剤の開発は進んでいない。本研究は、①HSP47に対するsiRNAを用いた直接的なHSP47発現抑制、②HSP47 inhibitorを用いたHSP47シャペロン機能の抑制、という2つの異なるアプローチを用い、“HSP47をターゲットとした分子標的治療”という新しい観点から新規肺線維症治療薬を開発することを目指している。本研究では、HSP47 siRNAはHSP47発現を直接抑制することを通してコラーゲン発現を抑制するのに対し、化合物スクリーニングから見いだされたHSP47 inhibitorは、HSP47蛋白発現には直接的な影響は及ぼさず、HSP47のシャペロン機能を抑制することによりコラーゲン合成を抑制することが示された。また、HSP47 inhibitorは線維芽細胞の増殖やmigrationを抑制する作用も持つことが示された。これらの結果から、HSP47 inhibitorはIPFの治療薬候補となり得ることが示された。近年、癌間質の線維芽細胞が癌の増殖・浸潤に促進的役割を果たしていることが注目されている。そこで、本研究では肺癌切除標本でのHSP47発現を免疫組織学的に検討し、癌間質の線維芽細胞におけるHSP47発現とその後の予後との関連を検討した。多変量解析により、癌間質の線維芽細胞におけるHSP47発現はその後の有意な再発リスク因子であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
HSP47 inhibitorはHSP47のシャペロン機能を抑制することでコラーゲン合成を抑制することを証明し、英文論文として結果を報告した(Miyamura T, Sakamoto N, Kakugawa T, et al. Biochem Biophys Res Commun 2020: 530(3): 561-565)。また、臨床面でも肺癌での癌間質の線維芽細胞におけるHSP47発現はその後の再発リスクとして有意な独立したリスク因子であることを明らかとし、英文論文として報告した(Miyamura T, Sakamoto N, Ishida K, Kakugawa T, et al. Respir Res 2020: 21(1):234.)以上の結果は、順調に研究が進展していることを意味する。
肺線維芽細胞を使った系では、HSP47 inhibitorが抗線維化効果を有することが明らかとなった。今後は、肺線維症マウスモデルなどを使って抗線維化効果を検証する予定である。
HSP47 inhibitorを用いたin vitro検討および臨床的検討は順調に進んでいるが、動物モデルでの検討が遅れている。この未使用額については、令和4年度の実験試薬や消耗品の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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