現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はデーターが安定するように、フローサイトメトリーとリアルタイムPCRの条件設定を慎重に行っている。このため、本年度はデーターが得られなかった。 制御性T細胞と相補的に働き、肉芽腫形成に強く関与するものと考えられるTh17細胞に注目し、血清、気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いてIL-17を測定した。しかし、いずれも測定感度以下であり、データーが得られなかった。Th17は、CCR6を有しており、CCL-20と反応し病巣局所への集簇が観察される。サ症においても、CCL-20の発現がみられるものと想定されたので、血清とBALF中のCCL-20濃度をELISA法で測定した。その結果以下のことが明らかになった。1)サ症における血清CCL-20値は、健常ボランティアよりも高値であった。2)血清CCL-20とsIL-2Rとの間には正の相関がみられた。3)BALF CCL-20はsIL-2R、BALF総細胞数およびCD4/8比と正の相関がみられた。4)血清CCL-20値のcut-offを11.35pg/mlに設定し、高値群と低値群に分けると、高値群においてACE, リゾチーム, sIL-2R, BALF中リンパ球分画が高値、DLcoが低値であった。以上より、CCL-20は、新たなサ症における疾患活動性マーカーの候補となる可能性があるため、今後症例数を増やし、臨床パラメーターと比較、検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)PBMC中IL-10, TNF-α, IFN-γmRNA発現量とTregの発現頻度の検討: 活動期10例、非活動期10例、健常ボランティア10例からPBMCを採取する。24時間培養後1mlをRealtime PCR用に採取し、残りを濃縮しフォローサイトメトリーを実施しTreg、Il-10産生細胞の発現を測定する。2)Treg分離培養、IL-10、IL-35、TGF-β産生の検討: 活動期、非活動期、健常コントロールそれぞれ10例から末梢血を採取し、cDNAライブラリーを作成する。IL-10、IL-35、TGF-βの発現をReal time PCRで定量する。3)PBMC産生サイトカイン及びTreg発現の経時的変化: 診断時と3~6ヵ月後の2pointで採血し、Treg、IL-10産生発現頻度、IL-10、IFN-γ、TNF-αmRNA量が予後予測因子になるか検討する。4)肺肉芽腫マウスモデルにおけるTreg機能の解析: Tregを標識したFoxP3GFPマウスを用い肺肉芽腫モデルを作成し、Day0, day3, day7, day14, day28に血液、BALF中のTreg(GFP陽性細胞)の発現頻度をフローサイトメトリーで測定する。活動期にはTregが不活性化され、改善期には回復している可能性があるため、マウスモデルで活動期day 3, 改善期day 28にBAFLを採取しTregを抽出し、CTLA-4及びCD25遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量し比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定予算を全額使用できなかった理由としては、FACSで使用する予定のモノクローナル抗体(抗CD4, 抗CD25, 抗FOXP-3, 抗IL-10)を購入しなかったこと、リアルタイムPCRの実験を遂行しなかったことにより、試薬購入費が高額にならなかった。現在フローサイトメトリーの条件を調整し、最適環境が整えば実験を遂行する予定である。
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