無菌であるとされていた下気道にも、多様性に富んだマイクロバイオームの存在が示され、様々な呼吸器疾患との関連が注目されている。 申請者らは特発性肺線維症(IPF)に焦点をあて、患者のBALF中のマイクロバイオーム解析を行った。その結果、①マイクロバイオームの多様性の喪失(ディスバイオシス)が早期死亡と相関すること、②特定細菌群の増殖や減少(フィルミクテス門の増殖とプロティオバクテリア門の減少)が疾患進行と相関することを示した。一方、急性増悪の発症とマイクロバイオームの変容との関連については、イベント発生数が少なく、現在のところ結果は示せていないが、今後も検討中を継続していく。 申請者らは、さらにマウス肺内のマイクロバイオーム解析を行った。ブレオマイシン投与肺線維症モデルにおける肺組織のマイクロバイオームを解析し、正常マウスと比較して、マイクロバイオームのディスバイオシスが起こり、フィルミクテス門の増殖とプロティオバクテリア門の減少という、IPF患者と極めて近似した現象が起きていることを示した。このマウスモデルは、IPF患者と同様な病原微生物刺激に対する自然免疫応答が起きていると考えられる。 今後は、このマウスモデルも用いて、肺内ディスバイオシスから、TOLL様受容体やサーファクタントプロテイン等を介する自然免疫応答、そして線維化の進行や急性増悪発症へと進む病態の解明を行い、抗菌薬治療の評価等の研究へと繋げていく。
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