研究課題/領域番号 |
18K08151
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山口 美樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10530454)
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研究分担者 |
佐久間 裕司 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10364514)
内田 宏昭 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (20401250)
角 俊行 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60772291) [辞退]
田中 悠祐 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (70792125) [辞退]
多田 周 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (00815441)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺上皮幹細胞 / 選択的培養 / イミュノトキシン / 抗体 |
研究実績の概要 |
ディスパーゼならびにコラゲナーゼを用いて正常肺組織から肺細胞を取り出すことでヒト肺細胞(HuL細胞)を得ることができる。このHuL細胞中には肺胞上皮幹細胞、血管内皮細胞、間質系細胞および血液系細胞が多数含まれている。このため肺胞上皮幹細胞を特異的に培養するにはこれらの細胞を除いて培養する必要があった。しかしながら、BEGM培地を用いて2週間培養したところ血液系、線維芽細胞、血管内皮細胞などの間葉系細胞の殆どが死滅し、増幅した細胞はTROP2+ITGA6+CD24lowの未熟な肺上皮細胞の集団と考えられた。更にこの細胞を1週間培養した後、マトリゲル上に播種することでスフェロイドを形成し肺胞上皮あるいは気管支上皮の性質を持つスフェロイドへ分化することが可能であった。以上の結果からBEGM培地で培養した細胞は肺上皮幹細胞に極めて近い細胞集団であり、第一段階の選択的培養は確立できた。しかしながら、この環境で培養を続けるとTROP2- /CD90+の間葉系細胞が出現し、肺上皮細胞の増殖が抑制された。私たちは抗体薬物結合(ADC)型抗体薬に用いるための抗体を探索できるツールを開発し(DT3C)、難治性腫瘍を対象とした抗体/抗原の探索を進め現時点で600個以上の内在化抗体を得ている。DT3Cの特徴は抗体と混合するだけでADC様な抗体-DT3C結合体が作製できる。これを培養液に加えるだけで標的細胞を死滅できる一方で標的細胞以外には全く影響を与えない。したがって、間葉系細胞のみを選択的に死滅させることが可能である。これまで樹立した抗体の中にこの培養系に使える抗体が存在してないことから、新たな抗体を樹立することにした。免疫原は、この培養系で出現する間葉系細胞を用いた。現在までに141個の抗体が樹立でき、この抗体の中で肺上皮系細胞でも発現している抗体を除いた76個の抗体について抗原同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちの目的は肺上皮幹(前駆)細胞の効率的な培養系の確立である。第1段階としてBEGM培地でHuL細胞を2週間培養するだけで肺上皮幹(前駆)細胞の選択的な培養系が確立できた(1年目)。今年度(2年目)は選択的培養の第2段階であるモノクローナル抗体とDT3Cを組み合わせた抗体-DT3C結合体を加えた培養系の確立である。この培養系に用いるための候補抗体は既に得られており、この中から最も効率良く間葉系細胞を死滅させ、且つ肺上皮幹(前駆)細胞に影響を与えない抗体を選別している。順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在までに樹立できている抗体から更に最も効率的な選択的培養を確立できる抗体を選別し培養系を確立する。一方で抗原同定はあまり進んでないので早急に抗原を決定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:前年度までに樹立した抗体の中に肺上皮幹(前駆)細胞の選択的培養に使用可能な抗体が存在せず、新たに抗体を樹立することとした。そのために必要な経費を『前倒し請求』してこれに当てることにしたが、抗体の樹立が考えた以上にスムーズに進み経費を節減することができたため。 使用計画:この残額(251,943円)は、次年度の実験計画を進めるために必要である。目減りした分についてはできる限り経費を節約しつつ次年度の研究を遂行する。
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