研究課題
緒言: 喘息はコントロール良好な疾患となったが、喘息増悪は今でもしばしば見られ、増悪の予防及び治療法の確立は重要と考えられる。Cadherin-related family member 3(CDHR3)は、cadherin superfamilyに属する膜貫通の糖蛋白で、気道上皮細胞に発現するが、その機能はよくわかっていない。近年、CDHR3の遺伝子変異は、小児喘息における重度な増悪と関連することが報告された。さらにCDHR3は、ライノウィルスの中で重篤病態を引き起こすとされる、C型ライノウィルスの受容体であることが判明し、喘息増悪に関与する可能性が示唆されている。今回我々は、CDHR3が、好酸球の機能を活性化させるかにつき検討した。方法: 健常人の末梢血好酸球を使用した。好酸球は、デキストラン、Percoll液、及びimmunomagnetic beadsによるnegative selectionにて分離した。好酸球をCDHR3でcoatしたplateとincubateし、残存好酸球ペルオキシダーゼ測定法で接着反応を測定した。また、好酸球の活性酸素産生を、チトクローム還元法を用いて測定し、好酸球の脱顆粒は、上清のeosinophil-derived neurotoxin 濃度を測定することで評価した。結果: CDHR3は好酸球の接着を誘導し、IL-5は好酸球のCDHR3への接着を増強した。さらに、CDHR3は好酸球からの活性酸素産生を誘導し、脱顆粒を誘導した。考察: 今研究から、CDHR3は好酸球のエフェクター機能を活性化することが明らかとなった。CDHR3による好酸球活性化が、喘息増悪に関連する可能性が考えられた。今後CDHR3遺伝子変異の好酸球機能に与える影響について、変異蛋白の使用や変異遺伝子のtransfectionによって、検討する予定である。
3: やや遅れている
前述の研究実績だけでなく、現在以下のプロジェクトが進行中であり、研究全体ではやや遅れていると思われる。①IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果。②ALIシステムを用いたRV-A/B/C に対する抗ウィルスサイトカインや薬剤の効果
①IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果現在IFN-βプラスミドを作成中である。IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果を検討し、IFN-βの作用と比較検討する。抗炎症作用を示す場合は、臨床応用も念頭に置き、より良い投与経路やその作用機序を検討する②ALIシステムを用いたRV-A/B/C に対する抗ウィルスサイトカインや薬剤の効果現在ALIシステムの立ち上げ中である。RV-A、B、C を使用し、RV に効果が期待される薬剤(マクロライド系抗生剤、気管支拡張薬など)の治療効果の違いを調べることで、種特異的な治療法を検討する③CDHR3またはORMDL3の好酸球・好中球機能に対する影響CDHR3の好中球機能に対する影響及び、CDHR3遺伝子変異の好酸球機能に与える影響について今後検討する予定である
ALIシステムの構築に時間がかかり、現在予備実験中である。来年以降の本実験で使用させていただく
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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