研究課題/領域番号 |
18K08153
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
中込 一之 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60401113)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気管支喘息 |
研究実績の概要 |
緒言: 喘息はコントロール良好な疾患となったが、喘息増悪は今でもしばしば見られ、増悪の予防及び治療法の確立は重要と考えられる。Cadherin-related family member 3(CDHR3)は、cadherin superfamilyに属する膜貫通の糖蛋白で、気道上皮細胞に発現するが、その機能はよくわかっていない。近年、CDHR3の遺伝子変異は、小児喘息における重度な増悪と関連することが報告された。さらにCDHR3は、ライノウィルスの中で重篤病態を引き起こすとされる、C型ライノウィルスの受容体であることが判明し、喘息増悪に関与する可能性が示唆されている。昨年はCDHR3が好酸球のエフェクター機能を直接活性化させることを報告した。今回我々は、好酸球接着や活性酸素産生におけるCDHR3遺伝子変異の影響を検討した。 方法: 健常人の末梢血好酸球を使用した。好酸球は、デキストラン、Percoll液、及びimmunomagnetic beadsによるnegative selectionにて分離した。野生型(C529)、変異型(Y529) のCDHR3をコードするplasmidを、HeLa細胞にtransfectionし、好酸球と共培養した。好酸球のHeLa細胞に対する接着能は残存好酸球ペルオキシダーゼ測定法で、活性酸素産生はチトクローム還元法を用いて測定した。 結果: CDHR3の変異遺伝子をHeLa細胞にtransfectionすると、好酸球のHeLa細胞に対する接着及び活性酸素産生は増強した。 考察: 今研究から、好酸球は、CDHR3遺伝子変異を持つ細胞と共培養することで活性化することが明らかとなった。CDHR3遺伝子変異による小児喘息の重度な増悪の誘導に、好酸球活性化が寄与する可能性が示唆された。今後CDHR3の好中球に対する影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の研究実績だけでなく、現在以下のプロジェクトが進行中であり、研究全体ではやや遅れていると思われる。 ①IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果。 ②ALIシステムを用いたRV-A/B/C に対する抗ウィルスサイトカインや薬剤の効果
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今後の研究の推進方策 |
①IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果。IFN-βプラスミドの作成が終了した。IFN-λのマウス喘息モデルに対する効果を検討し、IFN-βの作用と比較検討する。抗炎症作用を示す場合は、臨床応用も念頭に置き、より良い投与経路やその作用機序を検討する ②ALIシステムを用いたRV-A/B/C に対する抗ウィルスサイトカインや薬剤の効果。現在ALIシステムを用い予備実験を行っている。RV-A、B、C を使用し、RV に効果が期待される薬剤(マクロライド系抗生剤、気管支拡張薬など)の治療効果の違いを調べることで、種特異的な治療法を検討する ③CDHR3またはORMDL3の好酸球・好中球機能に対する影響。CDHR3の好中球機能に対する影響について今後検討する予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
ALIシステムの構築に時間がかかり、現在予備実験中である。次年度以降の本実験で使用させていただく
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