研究課題
肺動脈性肺高血圧症Pulmonary Arterial Hypertension(PAH)は肺動脈の内膜や中膜が肥厚して肺動脈圧が上昇し、右心不全を起こす生命予後不良の指定難病である。本研究チームは、2009年以来PAH患者検体の遺伝子解析に取組み、現在までに合計約400検体(全国認定患者3500名の1割強)の解析を進めてきた。我々はPAH研究において、臨床と基礎の密接な共同研究の組織であり、国内では最大規模の症例を持ち、論文数に代表される研究実績において国際的にも評価される稀有の研究組織である。膠原病等との関連を特定できない特発性PAHのうち約15-20%はBMPR2遺伝子の変異によって発症するが、それ以外では原因を特定できておらず、分子機構は不明で治療方法も確立していない。本研究チームでは次世代シークエンサーによる全エキソーム解析を実施し、新規のPAHの発症に関与する原因遺伝子と発症リスクに関わる遺伝子の幾つかを発見した。これらの遺伝子の発症に強く相関するHot Spot変異を持つマウスの作製に成功した。当該年度は、これらマウスを用いたin vivo実験とin vitro実験による集学的解析を開始している。引き続き、PAH発症機序への関与を解明し、新規の治療標的を探索する。
2: おおむね順調に進展している
我々は次世代シークエンサによる全エキソーム解析を多数例に実施し超長寿者と患者集団の比較という独自の戦略を用い、血管疾患に共通する可能性の高い感受性遺伝子のHot Spot変異をIPAH患者に高頻度に見出すことに成功した。当該年度はin vitro, in vivoによる研究を進行しており、研究はおおむね順調に進展している。
血管疾患に共通する可能性の高い感受性遺伝子のHot Spot変異をIPAH患者に高頻度に見出すことに成功しており、原因遺伝子と感受性遺伝子の相乗作用によるIPAHの発症という仮説に至った。これを検証するためこれらHot Spot変異を持つマウスを作製した。In vivo実験とin vitro実験による集学的解析を開始しており、今後はIPAH発症機序の全容解明と、新規疾患モデルの確立を目指す。
遺伝子変異マウスを用いたin vivo実験や、in vitro実験は、おおむね当初の計画通りに進捗しているが、検体を用いた解析のためにマウス繁殖数の確保等に当初計画よりも時間を要し、検体解析を次年度に繰り越したものがあったため。次年度に今年度から繰り越した検体数の解析を次年度使用額を用いて実施する予定である。
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J Heart Lung Transplant
巻: 39 ページ: 103-112
10.1016/j.healun.2019.08.022.