研究実績の概要 |
B6マウス皮下脂肪から分離した脂肪組織由来間葉系幹細胞(AdSCs)をブレオマイシンで誘発した間質性肺炎(ILD)マウスモデルに経静脈的に投与しその効果を検討した。13週齢のB6雌マウスの後背部皮下にブレオマイシンを30 μg/μLの濃度で100μL浸透圧ポンプを用いて1週間持続皮下注入し、4週間飼育することによりILDモデルマウスを作成した。実験群は、正常マウス群、疾患群(PBS投与群:コントロール)、AdSCs投与群を設定した。その結果、AdSCs投与群は疾患コントロール群と比較して細胞数依存性に有意に肺の炎症と線維化を抑制した。この研究により、ILDモデルマウスの肺病変に有効な最小AdSCsの細胞数を決定した。次に、シンバスタチンPLGAナノ粒子をAdSCsに抱合してその細胞機能を評価した。シンバスタチンPLGAナノ粒子は、50 μg/50000 cellsの濃度においてAdSCsの遊走能、生存能を促進し、AdSCsが合成する抗炎症と抗線維化に働く因子の遺伝子合成を促進した。シンバスタチンPLGAナノ粒子抱合AdSCs (SimNP-AdSCs)の治療効果を確認するin vivoの実験を行った。治療群は、1. SimNP-AdSCs投与群, 2. AdSCs投与群, 3. 疾患群(コントトール)。SimNP-AdSCs投与群は、細胞単独投与群と比較して、ILDモデルマウスの肺の炎症と線維化を抑制する傾向が得られた。以上の結果は、2019年度の日本再生医療学会総会、ヨーロッパリウマチ学会で発表した。今後は、マウス数を増やして実験を行い、有効性を更に確認する予定であったが、補助事業を廃止することになったため実施にいたらなかった。
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