ダニ抗原による気管支喘息の病態への関与について、ミトコンドリア機能に着目し、ミトコンドリア新生の主要な調節因子であるPGC1alphaやTFAMと気道上皮バリア機能の破綻の関連について検討を行なった。気道上皮細胞にダニ抗原(HDM)を投与するとE-cadherinやZO-1などの上皮細胞間のタイトジャンクション蛋白の発現が低下するとともに、上皮細胞抵抗(TEER)も低下した。さらに、PGC1alphaやTFAMの蛋白発現量が低下し、ミトコンドリア量も減少した。PGC1alphaは脱アセチル化及びリン酸化により活性化されるため、脱アセチル化酵素であるSRT1720の効果を次に検討した。SRT1720はHDMによるタイトジャンクション蛋白の低下やTEERの低下を回復し、ミトコンドリア量も回復した。 上記に関わるシグナルを検討するため自然免疫受容体であるTLR4とPAR2に着目し、それらの関与を検討した。TLR4阻害薬のLPS-RS、PAR2阻害薬のGB83はHDMによるPGC1alphaとE-cadherin蛋白の減少を回復した。またプロテアーゼ阻害剤であるE64とAEBSFの効果も検討したところ、同様に HDMによる上皮細胞による上記蛋白の低下が回復した。HDMを用いた喘息動物モデルにおいても、マウス肺でPGC1alphaとTFAMが低下し、それと並行してE-cadherinの蛋白量も低下した。 本研究の結果より、HDMはPAR2/TLR4を解してPGC1alphaの機能を低下させることで気道上皮バリア機構を破綻させることが示された。この経路が喘息の新規治療標的となり得ることが示唆された。
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