研究課題
肥満、すなわち脂質の量的負荷が喘息のリスク因子であることは広く認識され、さらに脂質の質的負荷についても、ω6多価不飽和脂肪酸の過剰摂取と喘息発症リスク増加や、パルミチン酸を含む飽和脂肪酸の負荷と喘息重症化との関連が報告されている。しかしそれらの詳細な分子メカニズムは未だ明らかにされておらず、本研究の目的は、脂肪酸組成の不均衡がどのような機序でアレルギー性気道炎症と関連するのか喘息モデルマウスを用いて検証することである。なかでも我々は、C12-16の飽和/一価不飽和脂肪酸の伸長活性を有する長鎖脂肪酸伸長酵素 Elongation of long-chain fatty acids family member 6 (Elovl6)の活性とアレルギー性気道炎症に着目して検討を進めた。8~12週齢の野生型C57BL/6系マウス (WT)、Elovl6欠損型C57BL/6系マウス (Elovl6 -/-)に対し、day 0とday 14に100 μgの卵白アルブミン (OVA)を皮下感作し、day 28に10 μgのOVAを経鼻曝露して抗原特異的アレルギー性気道炎症モデルを作製した。昨年度と同様、OVA免疫Elovl6 -/-群ではWT群と比べ有意にBALF中の総細胞数、好酸球数、好中球数が増加し、肺組織で炎症細胞の気管支血管周囲領域への著明な浸潤、杯細胞の増加がみられることを確認した。さらに、肺組織においてOVA免疫Elovl6 -/-群ではWT群と比較してIL-5、IL-6、IL-13、IL-17A、Muc5ACのmRNA発現量が増加し、C12-16の飽和/一価不飽和脂肪酸の割合が増加していることを見出した。
3: やや遅れている
今年度は上記に加えて、ω3脂肪酸の摂取、ω6脂肪酸の摂取がアレルギー性気道炎症を修飾するか検討したが、実験条件の設定に苦慮したために十分な成果が得られず、進捗状況はやや遅れていると評価した。
これまでの検討により、Elovl6は好酸球性気道炎症のみならず好中球性気道炎症程度に影響を与えることが示された。今後は、そのメカニズムについてさらに検討を加える予定である。
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