研究実績の概要 |
様々な臓器由来の線維芽細胞のCAGEプロファイルの比較解析を行い、肺の線維芽細胞で特徴的な発現を示す88遺伝子を同定した。このうち8個の転写因子(TBX2, TBX4, TBX5, FOXL1, FOXP1, MEIS1, TGIF1, HOXA5)がスーパーエンハンサー領域と重なっていた。T-boxファミリー転写因子、とくにTBX4に着目して機能解析を行った。TBX4をノックダウンした肺線維芽細胞でRNAシーケンス解析を行い、TBX4がスーパーエンハンサー関連遺伝子群を広汎に制御しうることを見出した。また肺線維芽細胞をTGF-βで刺激すると、TBX2・TBX4・TBX5の発現が抑制された。したがってTGF-β刺激により、T-boxファミリー転写因子により構成されていたスーパーエンハンサー群が、全ゲノムレベルで変化すると想像された。以上の知見より、TGF-βシグナルが活性化している肺癌や肺線維症の疾患病態において、T-boxファミリー転写因子の発現低下が、肺線維芽細胞の活性化と表裏一体をなす可能性があると考えられた(Horie M, Miyashita N et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2017)。 次にForkhead型転写因子であるFOXL1の解析を始め、定量的PCRにより肺線維芽細胞での高発現を確認した。胎児由来肺線維芽細胞(HFL1)および成人肺腺芽細胞(NHLF)においてFOXL1をノックダウンし、RNAシーケンスによる網羅的な発現解析を行った。さらにヒト肺組織における蛋白レベルでの発現の確認、病的意義の探索のため、正常肺および肺線維症患者由来の肺組織におけるFOXL1の免疫組織化学染色の条件検討も行った。
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