研究課題
肺MAC症の起因菌である非結核性抗酸菌に対して、菌の生存必須遺伝子を同定できれば、新たな治療薬の開発につながる。2019年度、Mycobacterium intracellulare標準株に対して、トランスポゾンによる変異株ライブラリーの作成と次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンシングを組み合わせたトランスポゾンシーケンシング(TnSeq)を行い、全ゲノム規模で生存必須遺伝子およびバイオフィルム形成に特異的な必須遺伝子の同定を行い、誌上発表した(Tateishi Y. Sci Rep. 2020)。Mycobacterium intracellulare標準株では、506の生存必須遺伝子が存在することが分かったが、臨床株にも共通した生存必須遺伝子か否かが不明であった。そこで、病原性の異なる臨床株について、トランスポゾンを導入し、変異株プールを作成した。この変異株プールからTnSeqにより生存必須遺伝子を同定したところ、生存必須遺伝子数が368ないし365であり、標準株よりも少ないことが分かった。そして、フルオロキノロン(gyrB, gyrA)、 エタンブトール(embB, embA)、サイクロセリン(alr)、リファンピシン(rpoB)、SQ109(mmPL3)といった既知の抗結核薬における標的遺伝子が共通生存必須遺伝子であることが分かった。臨床菌株の生存必須遺伝子数の減少は、生体内での感染を持続させやすくするための病原体側の適応機構が示唆される。そして、臨床菌株と標準株の共通の生存必須遺伝子リストは、臨床的に有望な治療薬の開発において重要な情報源となる。
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ACS Infect Dis.
巻: 7 ページ: 479-492
10.1021/acsinfecdis.0c00851. Epub 2021 Jan 6. PMID: 33405882; PMCID: PMC7887755.
Sci Rep.
巻: 10 ページ: 17997
10.1038/s41598-020-75028-2.