研究課題
1. 気管支喘息患者誘発喀痰における好塩基球の意義に関して、喀痰中好塩基球と下気道炎症フェノタイプ、副鼻腔炎との関連を検討した。症例は68例、平均年齢は60.8歳、女性66.2%、アトピー型63.1%であった。喀痰中好酸球2%、好中球60%を基準と下気道炎症フェノタイプを検討すると、Paucicellular phenotype 18例、Neutrophilic phenotype 12例、Eosinophilic phenotype 24例、Mixed cellular phenotype 14例であった。フローサイトメトリー法にて評価した喀痰中好酸球数は他のphenotypeと比較し、Eosinophilic typeで有意に上昇していた。慢性副鼻腔炎は、副鼻腔CTをLund-Mackay score(LMS)で評価した。喀痰中好酸球数はLMSと相関したが、喀痰中好塩基球は有意な相関を認めなかった。一方で、喀痰中好塩基球は篩骨scoreと有意な相関を認めた。以上の知見は、喀痰中好塩基球と好中球増多を伴わない好酸球性炎症、篩骨洞炎症との関連を示唆している。2. IL-5およびIL-5受容体抗体を使用した重症喘息患者の血液および喀痰中好塩基球について、治療前および経過中評価を行った。IL-5抗体を使用した7例に対し、治療前後の好塩基球数を比較したところ、全ての症例で好塩基球数の減少を認めたが0にはならなかった。IL-5受容体抗体においても好酸球数が0になっているにも関わらず好塩基球数は0にはならなかった。現在抗体使用による好塩基球の活性化の検討を加えている。3. COPD患者の喀痰解析を行い、好塩基球が増加すること、またこのような症例では好酸球数も増加することを確認した。現在症例を増やし検討中である。
2: おおむね順調に進展している
喘息における好塩基球の意義に関しては、症例数を増やすことで、好酸球と好塩基球の関係からさらに下気道の4炎症フェノタイプや副鼻腔炎との関連について検討を加え、一定の結論を導くことができた。一方で、抗体製剤による好塩基球のフェノタイプや数の評価、COPDについては症例数がまだ十分ではなく、さらなる検討が必要である。また、好塩基球の詳細なフェノタイプに関する検討が生命倫理委員会への書類等の不備もあり、進められておらず今年度の課題と考える。
1. 気管支喘息に対する生物製剤使用症例について、治療による血液、喀痰好塩基球数および活性化、フェノタイプに関する検討を行い、治療効果および各種サイトカインと好塩基球との関連を検討する。2. COPDにおける好塩基球の役割に関して検討するために、喀痰、切除肺を使用し、喀痰・組織中の好塩基球数、フェノタイプの検討を行なう。同時に、COPDの好酸球性炎症と好塩基球との関係、2型炎症関連サイトカイン発現、ペリオスチン発現、2型自然リンパ球との関連についても検討し、COPDの好塩基球の意義を調べる。さらに、CT画像を使用し気道炎症および肺胞破壊を定量的に評価し、構造学的なフェノタイプとの関連についても検討する。以上の検討を通して、COPDにおける好塩基球のバイオマーカーあるいは治療ターゲットとしての可能性につき探索的検討を行う。3. 関節リウマチ関連細気管支炎、サルコイドーシス、気管支拡張症などの炎症性疾患ならびに慢性気道疾患について、誘発喀痰はBAL検体を使用し、好塩基球の定量を行うことで、慢性気道炎症病態における好塩基球の関与と役割について調べる。4. 臍帯血由来CD34+細胞を使用し好塩基球を分化誘導する。その際、サイトカイン環境を変えることで、活性化型好塩基球フェノタイプができるかどうかを検討する。活性化型フェノタイプが作成できれば、T細胞、2型自然免疫細胞、好酸球、樹状細胞との共培養を行うことで、好塩基球の自然免疫細胞としての役割を検証する。
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