研究実績の概要 |
人体には、一過性に体に侵入し病気を引き起こす病原菌とは別に常在している多くの細菌が存在する。また、その細菌叢の変化によって病気が引き起こされたり、病気から体を防御することもわかってきた。腸疾患は研究が進んでおり、炎症性疾患(潰瘍性大腸炎など)と腸内細菌叢との明らかな関連(J Gastroenterol.47:1298-,2012 Science.331:337-,2011)や、大腸癌発生との関連(Nat.Med.15:1016-,2009、Science.338:120-,2012)などが明らかになっており、probiotics治療が臨床試験に入ったところである。 一方、呼吸器疾患に関しては細菌叢の検討は報告数も少なく、研究は始まったばかりである。肺線維症に関してのmicrobiomeの報告は極めて少なく、その病態における関連性は不明である。本研究において、肺線維症と細菌叢の関連を明らかにする。我々の開発したヒトTGF-β1を肺に強制発現させた自然発症肺線維症マウスモデルを使用し検討した。気管支肺胞洗浄液あるいは肺組織の細菌叢の検討を行った。細菌叢のメタゲノム解析はNGSを用い16SrRNA解析を行い、oligo-typingによって菌種の同定を試みた。その結果、Proteobacteria門のHalomonas属が肺の線維化に関与していることが判明した。さらに、高塩環境を好む細菌叢が判明し、特に気道上皮にアポトーシスを引き起こす物質をある種の細菌叢が分泌することが分かった。今回判明した高塩環境で培養された細菌叢から分泌されるアポトーシスを引き起こす物質を同定し機能解析を行った。
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