研究課題
転写因子C/EBPαは肺の傷害時に様々な刺激から生体を守るために活性化する。しかしながら老化した個体ではその活性を発揮する事ができず、本来の恒常性を保てない事を証明してきた。慢性閉塞性肺疾患は長期にわたる喫煙の結果、比較的高齢者で発症する不可逆的な肺破壊と気流閉塞を呈する疾患であり、老化と疾患発症メカニズムの関連が強く示唆される。本研究においてC/EBPαの欠落とCOPD発症メカニズムの関連を示す事、転写因子の経年的な機能低下と関連する因子を説明する事が重要である。我々はC/EBPαKOマウスと慢性喫煙曝露モデルを用いて細気管支領域のプロテアーゼバランスの欠如がモデルの表現型に重要である事を見出した。具体的には細気管支領域の組織を抽出した網羅的解析において複数のアンチプロテアーゼ、鉄関連遺伝子に欠落を見た。細気管支領域細胞の細胞間接着因子の発現低下、プロテアーゼ活性の上昇、気道上皮細胞において傷害からの分化異常が観察され、これらは治療により可逆性であった。さらにヒト肺気腫との密接な関連性を報告した。一つの転写因子が特定の細胞において有事のみに活性化するという興味深い結果であり、発生段階においてはⅡ型肺胞上皮細胞の発達に最も重要な役割を持っていたことから、胎児性転写因子の重要性を気道上皮細胞でも示した。本治験はヒトにおいても病理表現型の決定因子であり、間接的であるが病態を証明した。しかしながら、経年的に機能に変化が生じ遺伝子レベルでの検討を行っている。転写因子の結合部位近傍の遺伝子解析手法を進行中であり、発展と共に今後の経過も期待される。
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Am J Respir Cell Mol Biol.
巻: 63 ページ: 67-78