研究課題/領域番号 |
18K08180
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
渡辺 正樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90398298)
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研究分担者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30264039)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホスホリパーゼA2 / 気管支喘息 / 間質性肺炎 |
研究実績の概要 |
脂質メディエーターは、生活習慣病の他に慢性炎症を基盤とする癌やアレルギーの病態にも関与することが明らかになりつつある。本研究は、脂質代謝を始動する酵素であるホスホリパーゼA2ファミリーの中で、肺における作用を報告されていないⅢ型分泌性ホスホリパーゼA2 (sPLA2g3) とその下流で合成されるリゾリン脂質に着目して、気管支喘息および間質性肺炎の難治化における役割の解明を目的としている。 本年度はまず、sPLA2g3の発現細胞の同定を行った。さらにsPLA2g3遺伝子欠失マウス (sPLA2g3-KO) に喘息を誘導して病態の重症度を野生型と比較した。喘息モデルは、卵白アルブミンと水酸化アルミニウムをマウスの腹腔内に投与して感作し、卵白アルブミンを吸入曝露して作成した。喘息の重症度は、気道過敏性、好酸球性炎症で評価した。気道過敏性は、マウスにメサコリンを吸入させて、呼吸機能解析装置 (flexiVent) で気道収縮反応を測定した。好酸球性炎症は、気管支肺胞洗浄液中の好酸球数を計測した。 sPLA2g3はヒトおよびマウスの気道上皮細胞に高発現していた。sPLA2g3-KOは、野生型と比べて気道過敏性と好酸球性炎症が増悪しており、喘息の喘息の病態が重篤化していることを確認した。これらの結果は、sPLA2g3が喘息の病態を抑制する作用を有する可能性を意味している。気管支喘息へのsPLA2g3の関与を示した報告はこれまでなく、新しい観点による病態解明と治療法開発に繋がる極めて重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、sPLA2g3の発現細胞の同定を行い、喘息モデルにおいて重要な役割を果たしていることを見出した。これらの成果から、当初計画した研究目的は、現在までおおむね順調に達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、sPLA2g3-KOを用いて喘息モデルにおける肺の脂質代謝物の網羅的解析を行う。まずは未処置の野生型マウス肺を用いて、脂質分画およびsPLA2g3 の基質の脂質を確認する。次に、sPLA2g3-KOに喘息を誘導して野生型と比較することにより、病態形成に伴い変動する脂質メディエーターを特定する。間質性肺炎モデルにおいても同様の解析を行う。
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