研究課題
近年、治療成績の大きな進歩を遂げた非小細胞肺癌と異なり、小細胞肺癌では約30年間にわたり治療成績の進歩がなく、抜本的な治療戦略の見直しが必要である。小細胞肺癌の治療においては抗癌剤耐性化が大きな障壁として存在しており、我々はその克服を目指した診療アプローチの確立が望ましいと考えた。そこで小細胞肺癌細胞株を用いた基礎的研究を行い、神経幹細胞マーカーであるネスチンが抗癌剤耐性化に関与している知見を見出した。さらに本研究計画を立案し、現在研究を進めている。臨床的な研究内容に関しては、前向き研究として所属施設の医学系研究倫理審査委員会の承認を本年3月に得ることができた。若干名ではあるが既に研究参加の同意を患者から得ることができたため、症例集積を開始したところである。一方、腫瘍組織のネスチン発現を免疫組織化学的に既に検討した小細胞肺癌症例のうち、組織生検時の血清が適格に保存されている症例がわずかしかないことが判明した。故に、現状では組織と血清との相関性を検討することは難しいと判断し、今後さらに症例を集積したうえで検討する方針へ変更した。ネスチン発現による耐性化誘導メカニズムの解明に関しては、DMS53小細胞肺癌細胞株の発現抑制株を樹立し、マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を用いて親株との比較検討を行った。その結果、このメカニズムに寄与する候補遺伝子が複数pick upされたので、個々の遺伝子の意義について検討を開始したところである。
2: おおむね順調に進展している
所属施設の医学系研究倫理審査委員会の承認を得ることに関しては、当初予測していた以上に時間がかかってしまったが、承認後の症例集積ペースは想定の範囲内で進んでいる。一方、小細胞肺癌細胞株を用いた基礎研究においても候補遺伝子のpick upまでは概ね順調に進んだと考えている。
本研究における目標症例数は小細胞肺癌20例であるため、積極的にエントリーを行い可及的早期に症例集積を終了したい。そのうえで速やかに解析へ移行する方針である。細胞実験に関しては、ネスチンによる抗癌剤耐性化の関連シグナルを効率よく同定し、分子生物学的解析へ進める方針である。
細胞実験データの解析が若干遅れたため、実験関連物品の発注が遅れてしまったことが主因である。予定していた研究内容は次年度に合わせて行う方針である。
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