研究課題
獲得免疫系における濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞による高親和性自抗体産生B細胞の誘導が膠原病の発症に関与する可能性が報告されているが、その役割は明らかでない。本研究はTfh細胞に着目し、関節リウマチ(RA)マウスモデルにおける間質性肺病変の免疫学的発症機構の解明を目的とし、SKGマウスを用いたRAモデルを解析する。SKGマウスはT細胞受容体刺激伝達分子ZAP-70の点変異により、潜在的に自己反応性T細胞を有する。Tfh細胞のマスター分化因子である Bcl6の機能阻害がRA発症に及ぼす影響を検討するために、SKGマウスにBcl6インヒビターを前投与した後にべータグルカンの投与後の関節炎および間質性肺炎の発症について解析した。その結果、Bcl6インヒビター投与により、関節炎スコア(関節の腫脹)および足関節の病理学的炎症スコア(リンパ球浸潤、軟骨傷害)は減少し、間質性肺炎は軽減した。また脾臓のGC-Tfh細胞の減少を認めた。次に、RA病態に対するTfh細胞やTreg細胞に対する転写因子c-Mybの臨床的意義および役割を明らかにするために、SKGマウスの遺伝子型をバックグラウンドとしたc-Myb遺伝子の活性化CD4+T細胞特異的なcKOマウスについて解析を行った。その結果、関節炎スコアと病理学的炎症スコアはいずれも減少し、間質性肺炎は軽減した。一方、脾臓のGC-Tfh細胞およびIL-10産生性Treg細胞の増加を認めた。以上より、c-MybはGC-Tfh細胞およびTreg細胞いずれにおいても抑制性に関与することが考えられた。以上より、c-Mybは正常獲得免疫において免疫担当T細胞間ネットワークの制御を行っていると考えられた。そして、その時空間的制御機構の異常は自己免疫疾患の発症に繋がり、RAにおいては関節炎や間質性肺炎の病態構築に深く関与することが示唆された。
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