研究課題
本研究は原因不明の難病疾患である肺高血圧症、特に肺動脈性肺高血圧(PAH)の発症にかかわる新規原因遺伝子を特定し根治療法に結び付けることを目的としたものである。PAHに関しては複数の遺伝子異常が同定されているが、申請者はすでに新規疾患関連遺伝子PDE1AをGWASシステムを用いて同定しており、本研究では申請者が代表研究者を務め、PAH患者レジストリを展開している厚生労働省科学研究費研究班(田村班Ⅱ)に参加する肺高血圧症診療施設が連携し、PDE1Aに関連した遺伝子変異と臨床的影響を網羅的に解析し、レジストリとゲノムデータと結びつけて難病におけるPhenotypeとGenotypeを比較検討することで肺高血圧症の病態解明および効果的な治療法に結び付ける。本年度はシーケンサーを用いたPDE1A遺伝子に対する網羅的に解析を行うため、ロングリードをカスタマイズして行うことができる新世代シーケンサーであるNanoporeテクノロジーを用いた解析手法を確立し、解析を行った。具体的にはロングリードのターゲットシーケンスが可能なプライマー配列を特定し、DNAの転写開始点の上流の3kbpの配列の検索を行うことができるNanoporeテクノロジー上での条件設定をもとに、プロモーター領域のロングリード解析を行うことができた。その結果、一部のサンプルにおいいてプロモーター領域の変異を認めたため、機能解析に進む予定である。
2: おおむね順調に進展している
我々の先行報告ではPDE1A遺伝子は肺動脈性肺高血圧症患者において機能亢進していることが示唆されていたため、Exon領域に機能変異をきたす変異個所が同定される可能性は低いと考えられていた。当初の計画通り変異がないことを確認できた。次にプロモーター領域を含む上流の遺伝子解析に関し、Nanoporeテクノロジーを用いた解析手法で変異を疑う部分を同定することができた。来年度以降の検証で予定どおり機能解析を実施する予定である。
プロモーター領域における変異の検索:Nanoporeテクノロジーを用いて検索した上流領域の配列比較を他の哺乳類と行う。相同性をプロットし、相同性のあるところにコンピューター上でmotif検索を行うことで、DNAの直上流以外にも発現変化に寄与する可能性がある候補配列の同定を行う。続いて候補の領域に対してサンガー法によるシーケンスを行うことで、頻度の多い変異を同定することができた。次に特定したプロモーター領域のレポーターアッセイを予定する。同定したプロモーター領域の変異に関して、ルシフェラーゼを用いたレポーターアッセイを行う。変異プロモーターを再現したルシフェラーゼ遺伝子のDNAを作成し、コントロールを比較して発現量の上昇が認められるかどうかを確認することで、同定されたプロモーター領域が発現亢進に寄与しているかどうかの検討を行う。さらに患者レジストリを用いたphenotype-genotypeの検証を行う。PDE1Aの変異はPAHにおける新規疾患関連遺伝子であることが期待されると同時に、ホスホジエステラーゼ自体が肺高血圧症の病気の進展に深くかかわっていることから、本遺伝子変異と治療反応性や予後が関与している可能性が期待される。そこで、遺伝子解析を行った症例を対象として、患者レジストリを用いた治療反応性の評価や予後との関連を調べることで、PDE1Aの変異と活動性との関連を検索する。
遺伝子解析費用が効果的に進んだため、次年度の機能解析により重点的に研究予算を配分したため
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