我々は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌細胞株に対してCRISPR/Cas9スクリーニングを用いてEGFR-TKI耐性に関わる遺伝子の抽出を行った。 薬剤耐性に関わる遺伝子として、すでに過去に報告のあるAXL、FGFR1に加えてSHOC2を同定した。 SHOC2に関しては、近年MEK阻害剤に対する薬剤感受性との関連で注目を集めるMAPキナーゼ経路の活性に関わるアダプタータンパクであり、EGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株においては、過剰発現することで、薬剤耐性となり、ノックアウトすることで、薬剤感受性となることが示された。さらにSHOC2に関しては臨床においても様々な遺伝子変異の報告があるが、そのような遺伝子変異を導入した遺伝子発現プラスミドを用いることで、SHOC2タンパクの中で、どの領域が薬剤感受性と関係するかにつき解析を行った。 また、SHOC2阻害作用があるとの報告のあるcelastrolを用いることでもEGFR-TKIとの相乗作用が認められることを示すなど臨床応用の可能性も示し、Molecular Cancer Resaerch誌に報告を行った。 そのほかにも、本CRISPR/Cas9による遺伝子編集とスクリーニングで得られた結果は、EGFRの活性化に関わる機序の解明や、KRAS遺伝子変異に対する薬剤やBcl-2阻害剤などEGFR-TKIに対する薬剤感受性以外の研究においても活用ができ、幅広い応用が可能であることを示した。
|