研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は全身性疾患と認識され、多方面からの病態解明が進んでいる。しかし、COPDの中枢に関する検討は少なく、行動科学的な治療の介入を支持する神経生理学的基盤の構築はこれからの課題である。本研究は安静時磁気共鳴画像(fMRI)の手法を用いて、慢性的な呼吸困難を主症状にもつCOPDにおいて、情動に関連する脳領域間の機能的結合性を検証するものである。対照群である年齢が一致した健常高齢者30例及びCOPD患者20例において、安静時fMRIの撮像を行った。本研究ではこれまでにCOPDは健常高齢者と比較し、左海馬の体積の減少があることを示した。さらにCOPDの左海馬を関心領域とし、左海馬と他の領域との接続性解析を行い高齢健常者と比較をした。COPDでは、左海馬と右体性感覚運動野間、両側海馬間の接続性が低下していた。COPDでは低酸素状態、息苦しさ、不安感、睡眠障害による海馬の萎縮が考えられ、また活動性が制約される患者において運動機能を司る脳部位の活動性の低下から接続性が低下していると考えられる。今後は、COPDの海馬に着目し、海馬サブ領域(海馬尾部、海馬支脚:CA1、海馬裂、前海馬支脚、傍海馬支脚、海馬分子層、CA3、CA4、海馬采、HATA)に分け、脳部位との接続性を解析する予定である。また呼吸リハビリ、運動処方が、海馬と右体性感覚運動野間の接続性にどう影響を与えるかを調べるため、生活指標、運動回数を変数とし、さらに解析を進め論文としてまとめる予定である。
2: おおむね順調に進展している
COPD患者のデータを増やし、解析可能症例数が蓄積し、昨年度に測定を終えた健常高齢者との比較を行うことができた。COPDにおける左海馬の体積の減少と関連し、接続性への解析に進むことができた。進行状況及び結果も順調である。
COPDの海馬に着目し、海馬サブ領域(海馬尾部、海馬支脚:CA1、海馬裂、前海馬支脚、傍海馬支脚、海馬分子層、CA3、CA4、海馬采、HATA)に分け、脳部位との接続性を解析する予定である。また呼吸リハビリ、運動処方が、海馬と右体性感覚運動野間の接続性にどう影響を与えるかを調べるため、生活指標、運動回数を変数とし、さらに解析を進め論文としてまとめる予定である。
次年度使用額が生じた理由は、計画していた外国旅費が発生しなかったことによる。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、主として英文校閲料とオープンアクセスジャーナルでの論文掲載料として使用する予定である。
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