研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は全身性疾患と認識され、多方面からの病態解明が進んでいる。しかし、COPDの中枢に関する検討は少なく、行動科学的な治療の介入を支持する神経生理学的基盤の構築はこれからの課題である。本研究は安静時磁気共鳴画像(fMRI)の手法を用いて、慢性的な呼吸困難を主症状にもつCOPDにおいて、情動に関連する脳領域間の機能的結合性を検証するものである。対照群である年齢が一致した健常高齢者30例及びCOPD20例において安静時fMRIの撮像を行い、左海馬を関心領域とし、左海馬と他の領域との接続性解析を行い、高齢健常者と比較をした結果をこれまでに学会にて発表した。COPDにおいて、左海馬と右体性感覚運動野間、両側海馬間の接続性が低下していることを確認した。2020年度は論文化に向けて、COPDのfMRIの新規撮像を10例で実施し、接続性解析を試みる予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行下おける撮像実施が困難であったため、2020年度は高齢者群において以下の解析を中心に行い、一部を論文として発表した(1)(2)(3)。本来は2020年度が研究計画最終年度であったが、研究活動が新型コロナウイルス感染症の影響を受けたため、期間延長となった。(1)高齢健常者の安静時fMRIにおいて、呼吸と心拍数の生理学的ノイズがどのように脳内の接続性に影響を与えているのかを明らかにした。(学会発表1、論文1)(2)COPDと年齢が一致する高齢者において、海馬傍回の体積が嗅覚を初めとする認知機能にどのように関与しているかを明らかにした。(論文2、学会発表2)(3)COPDと年齢が一致する高齢者において、海馬をサブ領域に分け、海馬傍回と認知機能を含めた関係性をパス解析にて明らかにした。(学会発表3)
3: やや遅れている
2020年度にはCOPD症例10例の新規データ取得を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行のため、新規の撮像実施が困難であった。しかし、今後の方向性を見定めるために年齢が一致した高齢者群における解析を実施し、学会での発表ならびに論文として発表した。今後は、上記(1)と(2)で得た結果をふまえ、COPD症例に関する論文を発表する。
COPD症例のデータにもとづく論文作成には、症例のデータ増加が必要である。新型コロナウイルス感染症の状況を見極めつつ、COPD症例のデータを取得する。また、健常高齢健常群での解析結果をふまえ、これまで取得したCOPDの20症例のデータを見直し、問題点等の課題を整理し、論文作成に活かす。
新型コロナウイルス感染症の流行下おける撮像実施が困難であったため、目標症例数に到達できず、論文完成に至らなかった。また、学会出張のための旅費が発生しなかった。論文完成に向けた英文校正料、論文投稿料、論文掲載料での使用を計画している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Frontiers in Neuroscience
巻: 14 ページ: -
10.3389/fnins.2020.00631
Frontiers in Human Neuroscience
10.3389/fnhum.2020.556519