研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)においては、喫煙による傷害ミトコンドリア由来のROSによりDNA損傷がおこり、それを契機とした細胞老化機序が進行している。我々は、COPD、非COPD喫煙者、非喫煙者から末梢血を採取し、細胞老化あるいはフェロトーシスとの関連が考えられる因子に関してELISAによりその血中濃度を測定した。患者数は各19名(52.5±1.98歳、全員男性)、6名(57.3±8.73歳、全員男性)、6名(69.3±7.83歳、全員男性)とし、対象因子としてはPARK2 、LaminB1、NCOA4を検討した。PARK2はミトコンドリア傷害を制御し、細胞老化予防に働く。COP気道上皮では発現が低下しており、細胞老化を呈している。LaminB1は核膜とクロマチンに結合しDNA複製/修復・転写・細胞分裂に関与している。また細胞老化の深化に重要とされ、COPD気道上皮では発現が低下している。NCOA4 はアダプター蛋白としてフェリチノファジーに働く。COPD病態では、気道上皮細胞においてNCOA4、遊離鉄、過酸化脂質の発現が亢進しており、フェロトーシス関与が報告されている。結果:PARK2の発現は、COPD、非COPD喫煙者、非喫煙者において、それぞれ106.0±4.6 、106.2±3.4、105.6±5.6 (pg/ml)であり、3者に有意差は認めなかった。LaminB1は、COPDと非喫煙者との比較となったが、1.82±1.1、2.42±4.0 (ng/ml)であり、COPDで低下する傾向はあるも有意差は認められなかった。NCOA4は、COPD、非COPD喫煙者、非喫煙者において、それぞれ5.99±5.1、6.01±3.3、6.06±9.3 (単位ng/ml)であり、3者に有意差を認めなかった。今回の検討は、血清による検討であり、気道上皮細胞での発現の高低にかかわらず、COPDや喫煙によって変化しなかった。血中の細胞成分による評価が重要であり、それにより全身性あるいは免疫系の細胞老化が検討できる。
3: やや遅れている
研究者は、先年度の途中で新規に設立された秋田大学呼吸器内科に赴任しており、症例検体では、血清によるELISA評価を行った。末梢血細胞自体の老化評価が十分に行えなかった。
今回の検討は、血清による検討であり、気道上皮細胞では発現の高低が報告されているにもかかわらず、COPDや喫煙によって変化しなかった。血中の細胞成分による評価が重要であり、それにより全身性あるいは免疫系の細胞老化が検討できる。またそれに応じて、血液中の炎症反応(CRP、IL-8、WBC)や手術検体があれば気道細胞の老化も評価してゆく。それらの相関を見ることにより、気道での細胞老化→全身性炎症→全身性/免疫系の細胞老化の関連が検討できる。さらに症例を前向きにフォローすることで、細胞老化と予後との関係を検討する。
研究者は、先年度の途中で新規に設立された秋田大学呼吸器内科に赴任しており、臨床教室のセットアップ(診療のシステム新規構築や医局員の勧誘、学生教育システムの新規構築)のために研究のエフォートがやや抑制された面があった。また、本研究のために新たに症例のリクルートを行う必要が生じ、直ぐに高度な実験系を遂行することができなった。本年度から新たに症例を増やし、検体も充実させ、培養実験や動物実験も展開し、研究費を使用してゆく予定である。
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