研究課題
肺胞領域における自然免疫の担当細胞として、肺胞マクロファージが重要である。一方、喫煙による酸化ストレスはDNA損傷から細胞老化機序が進行することが知られており、同時にDanger signalやIL1bの経路の活性化から各種炎症性分子を産生しCOPD病態の進展に寄与すると考えられる。そこで、自然免疫系の肺胞マクロファージに対し喫煙刺激を行い、幾つかのターゲット遺伝子の発現を検討し、COPD病態との関りを検討した。ここで、Danger signalやIL1bはTLRやIL1Rを刺激するが、いずれのレセプターも細胞内領域でMyD88と会合しMyD88依存的なシグナルと考えられる。そこで、ターゲット遺伝子としてはMyD88欠損マウスにより発現が減弱することが報告されている分子として、ADMATS20、SPHK2、TNFSF14を選択した。肺胞マクロファージは、U937、THP-1の細胞株の他、3名の患者からBAL(気管支肺胞洗浄)により回収された肺胞マクロファージを用いた。3名はすべて男性で、それぞれ患者-1:78歳-器質化肺炎、患者-2:45歳-間質性肺炎、患者-3:71歳-間質性肺炎である。0%、1%、3%タバコ抽出液にて18時間刺激し、RT-PCRにてターゲット分子/b-actinの変化を評価した。結果、ADAMTS20は患者-1で低下、THP-1で上昇、他では不変。SPHK2は患者-1、-2で低下、U937、THP-1で上昇、患者-3で不変。TNFSF14は患者-1とU937で低下、患者-2で大きく上昇、患者-3とTHP-1では不変であった。今後はNを増やして検討する必要がある。
4: 遅れている
今年度は、昨年度以上に 新型コロナウイルス感染拡大が進行したために、研究が大きく制限された。特に、院内の感染防御強化のために、患者の来院制限や検体採取の制限、肺機能検査の制限が行われ、昨年度と合わせて大きな観察期間の欠落となってしまった。また実際に患者の中には、コロナ感染により増悪症状を引き起こし、他院やコロナ病棟に入院加療が必要となり、研究対象から脱落した患者も継続的に出ている。県外他施設との研究協力も、移動による感染リスクから難しい状況となっており、おもにZOOMによるディスカッションに限られている。
新規の検体採取や患者の登録を行うと同時に、培養細胞等を使った実験の割合を増やすなどして、コロナ禍での最大限の研究成果を挙げるべく検討する。
新型コロナ感染拡大のため、呼吸器疾患領域の症例や検体の収集、解析が大きく制限されたことにより、研究の遂行が遅延したために次年度使用額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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