喘息は、大気汚染物質、真菌・ダニ等のハウスダストが誘因となる慢性炎症性気道疾患で、気道過敏性や気道狭窄を伴う。吸入ステロイド薬を中心とした治療により多くの喘息患者のコントロールは良好となったものの、依然重症例が存在し、新規の分子標的治療薬の開発が望まれている。IL-33は、重症喘息で顕著に増加し、発症の中心的な役割を果たしている。IL-33は、気道上皮で恒常的に産生され、核内に局在し、組織障害で受動的に放出されると考えられていたが、ATP等の刺激でも放出され、その産生・放出機序には未解明な点が多い。 本研究によって、気道上皮細胞の恒常的なIL-33発現が精製YKL-40及び過剰発現によって減弱することを見出した。一方で、YKL-40を発現抑制した細胞株では、IL-33発現が有意に増加したことから、YKL-40がIL-33の発現調節に関与していることが示唆された。 更に、PAR-2を発現抑制した細胞株では、IL-33の発現が著しく増加した。 従って、YKL-40がIL-33発現を抑制する機序としてPAR-2を介する可能性が想定される。一方、IL-33を過剰発現した細胞株では、YKL-40の発現が著しく増加したことから、IL-33によって発現増加するYKL-40は、IL-33の発現を抑制するnegative feedback作用を持っていることが示唆され、喘息では、この抑制機構が破綻している可能性が考えられる。 この機序の解明はIL-33の産生メカニズムの解明、喘息での2型・非2型炎症の決定に重要な知見をもたらし、創薬につながると考えられる。 現在、プロテアーゼ作用を持たないYKL-40が、どのようにPAR-2を活性化してIL-33発現を調節しているかの解析を進めており、IL-33発現を制御できる喘息治療の開発につながる研究基盤を構築している。
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