研究課題/領域番号 |
18K08196
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
森本 耕三 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 抗酸菌部 細菌科, 研究員 (40511879)
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研究分担者 |
慶長 直人 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 副所長, 副所長 (80332386)
土方 美奈子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 部長 (90332387)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原発性線毛機能不全症候群 / 鼻腔NO測定 / 遺伝子検査 / 電子顕微鏡検査 / 副鼻腔気管支症候群 / 不妊症 / 非結核性抗酸菌症 |
研究実績の概要 |
原 発 性 線 毛 機 能 不 全 症 候 群(PCD: primary ciliarydyskinesia)は、線毛の構造・機能に関わる遺伝子の変異による主に常染色体潜性遺伝を示す。本邦でも約1万2000人の患者がいると推定されるが、欧米のようなPCD診断システムが未整備であり、副鼻腔気管支症候群として臨床診断されている症例、不妊症として治療を受けているが、同症と気づかれていない症例が多数存在することが予想される。また本邦で有病率の高い非結核性抗酸菌症と誤診断されている可能性も考えられる。本邦ではこれまでの報告の殆どが電子顕微鏡のみで行われ、症例報告レベルとして認めるのみである。これは、患者や家族に大きな負担となっている症例が多数存在することが予想される。将来の難病認定、医療補助を受けられる患者を、また新規治療法が開発されたときにメリットを受けられる症例を正確に抽出することが必須である。米国ガイドライン推奨法により、①鼻腔NO測定、②遺伝子検査、③電子顕微鏡検査を用い、症例蓄積を行い本邦独自の遺伝子パターン、phenotypeの存在を明らかとする。①広く疑い症例をひろいあげ、スクリーニングとしてレジスター法を用い鼻腔NO濃度測定を行う。左右2回ずつ測定し平均値をnl/minで示す。②鼻腔NO低値例、正常であっても臨床的に強く疑う症例、および鼻腔NO測定を行えなかった症例は遺伝子検査を行う。遺伝子は報告のある40遺伝子中32遺伝子をカバーするが、適宜対象遺伝数を増やしていく。③鼻腔NO低値例および鼻腔NO測定できないがPCDを強く疑い症例に鼻粘膜生検で得られた線毛を電子顕微鏡解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 疑い症例(副鼻腔炎を合併した非結核性抗酸菌症などを含む)50例にスクリーニング検査として鼻腔NO測定を行った。2. これまでに14例に鼻腔NO低値例を認め、PCDと診断している3. 遺伝子検査は25例で検討しており、5例でPCDに矛盾しない結果を得ている。4. 遺伝子検査異常を確認した5例は、全例鼻腔NO低値であった(5/11)。5. 欧米では稀であるが線毛の機能欠損を強く疑わせる遺伝子異常をhomoで認めており、本邦の特徴である可能性がある。6. 対象を18歳以上としているため、呼吸不全を呈している症例が3例含まれていた。7. びまん性汎細気管支炎と診断されていた症例を複数認めている。
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今後の研究の推進方策 |
本邦PCD症例の遺伝子変異、phenotypeの特徴を明らかとするために、継続して症例の蓄積を行っていく。症例数を増やすために他施設から広く患者紹介を受ける体制を作っていく。さらに疾患の認知を向上させるために、学会や研究会などで発表していく。また、新規遺伝子変異に対応するために解析可能な遺伝子数を増やしていく。電子顕微鏡検査は新機種を導入し解析能を改善していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子顕微鏡の入れ替えのために一時サンプル収集の中断を余儀なくされた。繰越により、次年度これらの解析を行う。
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