本研究の目的は、腎透析領域を中心に、集計表を用いた二次分析研究を実践し、その具体的な手法や、論文化までの阻害要因および対策を広く公開することである。これにより、わが国で集計表を用いた二次分析の研究手法が広く普及し、ひいては、データを用いた「現状の見える化」が推進され、政策や医療現場に役立てることができる。 二次分析とは既存データ(二次データ)を利用した研究のことをいい、個票データを用いた二次分析は世界中で行われているが、集計表データを用いて行うことも可能である。諸外国と異なり、公的データであっても個票データの利用が困難な現状のわが国では、誰もが入手しやすい集計表を用いた二次分析が活躍する余地が大いにある。これまで、公表されている集計表データを複数年組み合わせる、あるいは、政府統計など他のデータと比較することで、集計表を用いた二次分析研究を実践し、英文原著論文として発信してきた経験から、集計表を用いた二次分析が普及すれば、現状を「見える化」し、政策や医療現場に影響を与えることが可能であると考える。しかし、集計表データを用いた二次分析研究の具体的な手法が記載された教科書は現時点では存在しない。 そこで、本研究は、集計表を用いた二次分析を実践し、その課題と手法を明らかにすることで、集計表を用いた二次分析を誰もが行うことができる未来を目指した。 本年度は、集計表を用いた二次分析の実践と、集計表を用いた二次分析の課題に関する2つの研究を継続した。集計表を用いた二次分析の実践については、英文原著論文5本を公表した。集計票を用いた二次分析の課題に関する研究については、集計表を用いた二次分析の研究手法、論文化までの阻害要因、対策を広く公開するホームページを更新した。しかし、本年度は英文原著論文の公表数が多く、ホームページ更新の時間が十分に得られず、まだ完成に至っていない。
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