研究課題/領域番号 |
18K08204
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 祐司 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (50377636)
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研究分担者 |
青山 俊文 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50231105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / スルファチド / 複合糖脂質 / 心臓血管病 / バイオマーカー / 尿毒素 / 高血圧 / 高脂血症 |
研究実績の概要 |
本研究は①慢性腎臓病(CKD)患者における血清スルファチド異常の臨床的意義を明らかにすること、②CKDによる血清スルファチド低下機序を明らかにすることを目的としている。 2018年度は、CKD患者の血清サンプルを用いた臨床研究を進めつつ、各種モデルマウスを用いてCKDに伴うスルファチド代謝異常の出現機序について検討した。CKDモデルマウスとして5/6腎摘マウスを用い、CKDにより血清スルファチド異常が出現することを再確認した。そして、スルファチド異常はCKDに伴うインドキシル硫酸の体内蓄積によりスルファチド分解酵素群の発現が増加することにより起こることを新たに見出した。この結果は培養実験でも確認された。 CKDには高血圧や高脂血症などのCKD増悪因子が関連するため、これらの影響についても検討した。高血圧モデルとして持続的アンジオテンシンⅡ投与マウスを用いた。高血圧の出現に伴い血清スルファチド値が低下すること、降圧薬の投与によりこのスルファチド異常は軽減すること、血清スルファチド変化はスルファチド合成酵素の発現変化によること、そしてスルファチド合成酵素の発現に影響を与える因子は、血圧自体、酸化ストレス、核内転写調節因子であるPPARαであることが示唆された。 高脂血症モデルマウスとしては、高コレステロール食負荷モデルを用いた。高コレステロール食の持続的摂取により、血清スルファチド値が低下すること、そしてこの変化はスルファチド合成酵素群の発現低下によること、PPARαの欠損状態ではこのスルファチド異常が顕著になることが明らかとなった。 これらの研究結果については国際英文誌にて公表した(Glycoconj J. 2019 ;Hypertens Res. 2018; Arch Toxicol. 2019). これらの研究結果はCKDに伴うスルファチド異常に対する治療法開発に大変重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的研究については、概ね研究結果を論文として公表することができている。臨床的研究についても、血清スルファチド値の測定自体は順調に進んでいる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究としては、糖尿病状態や飽和脂肪酸に変調した食事がスルファチド代謝に与える影響についても検討予定である。 臨床的研究については、スルファチド値の測定後、臨床的アウトカム(心血管病、死亡など)との関連性について統計的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は本科研費取得前に購入してあった試薬を用いて実験を行えたため、予定よりも少ない支出で研究成果を上げることができた。しかし、2019年度はこれらの試薬を消耗したため、多くの実験試薬や消耗品が必要となる。また、2018年度に出した研究成果を発表するため、学会発表や論文作成に関わる費用が増大する予定であり、2018年度の繰越金もそれらに充てる予定である。
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