研究実績の概要 |
本研究は①腎臓病患者における血清スルファチド(sulf)異常の臨床的意義、および②CKDによる血清sulf低下機序を明らかにすることを目的とした。 腎臓病に伴うsulf代謝異常の出現機序について、5/6腎摘マウスではインドキシル硫酸の体内蓄積によりsulf分解酵素群の発現が増加し血清sulf値が低下することを確認した(Glycoconj J.2019,36:1-11).また、高血圧モデルである持続的AngⅡ投与マウスでは、高血圧および酸化ストレスの上昇によりsulf合成酵素の発現が低下し血清sulf値が低下することが明らかとなった(Hypertens Res. 2019;42:598-609).また、高脂血症モデルである高コレステロール食の持続的摂取マウスでは、sulf合成酵素群の発現が低下し血清sulf値が低下すること、そしてこの変化はPPARαの欠損状態で顕著になることが明らかとなった(Arch Toxicol. 2019;93:149-161). さらに不飽和脂肪酸欠乏の影響を解析したところ、不飽和脂肪酸欠乏食持続摂取は脳内や腎内のsulf分解酵素の発現上昇をもたらしsulf異化を高めることが明らかとなった(FASEB J 2020;34:9594-9614)。これらの腎臓病に伴うsulf異常の出現機序は、新規腎臓病治療法開発にあたり重要な知見になる。 臨床研究としては、ANCA関連腎炎患者において、血清sulf値は高度の炎症と相関し糸球体の破壊所見(半月体形成)が強い患者で著明に低下することが明らかとなった(J Clin Med. 2022;11:762.).また血管炎症候群を対象とした解析でも抗GBM抗体腎炎や活動性の高いIgA血管炎で同様の所見を認めており、現在論文作成中である。今後、血清スルファチドは腎炎活動性マーカーとして利用できる可能性が示された。
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