2017-2021年に当院で腎生検を施行したネフローゼ症候群80名のうち治療前後で2回以上CT (間隔の中央値133.5日)検査を施行された22症例で検討した。CT画像から構築した3次元画像を用いて、腎容積を専用ソフトで評価したところ、腎容積が19%(前後比25 percentile)以上減少したものを「減少群」とした。この中には、腎体積が34%も減少した微小変化型ネフローゼが含まれる。その結果、減少群では、非減少群に比して、尿中Na/K比は有意に低く、レニンアンジオテンシンアルドステロン系(RAAS)亢進の指標であるSUSPUP、SUSPPAPは有意に高かった。つまりネフローゼ極期にうっ血腎を来した症例ではRAAS系が亢進しておりNaの尿排泄障害があることが判明した。 従来、ネフローゼの浮腫に関してはoverfilling仮説やunderfilling仮説があり、意見の一致をみなかった。これは病期によって病態が変わるために、overfillingが優位の時もあれば、underfillingが優位の時もあるからだと思われる。今回の我々の研究で、ネフローゼに伴うNephrosarca(うっ血腎)こそが、尿中Na排泄障害つまりOverfillingの原因であることが判明した。よって、尿中Na排泄が障害されているときには、うっ血腎の解除を優先するべきであり、バプタン投与で尿Na排泄が亢進する症例報告の機序も説明しうる。また、このような腎容積が減少した、明らかな腎うっ血を有する症例の腎生検の病理像では皮質よりもむしろ髄質にうっ血が存在していた。RAAS系の亢進は近位尿細管でのSGLT2の発現を上げることが報告されており、このようなネフローゼや心不全(特に右心不全)のうっ血症例でのSGLT2発現を病理的に評価し、SGLT2がうっ血腎に関わっている役割を今後明らかにしていく予定である。
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