研究課題/領域番号 |
18K08210
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田邊 克幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (40534805)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 蛋白尿 / 腎線維化 / Vasohibin |
研究実績の概要 |
本研究では、蛋白尿と腎線維化の動物モデル及び培養細胞系を使用して、その病態に対するVasohibin-2優位のVasohibin-1/2不均衡の役割を検討している。 本年度は尿蛋白を伴う糸球体病変の発生におけるVasohibinの役割を解明するための実験を行った。2017年に、Vasohibinは微小管を構成するαチューブリンを脱チロシン化する酵素活性を持つことが報告された。このため、脱チロシン化αチューブリンのマウス腎臓における局在を免疫蛍光染色により評価したところ糸球体への局在が確認され、ポドカリキシンとの二重染色の結果からポドサイトに存在することが判明した。電子顕微鏡による観察では、微小管は足突起には存在せず、一次突起に集中することから、脱チロシン化αチューブリンはポドサイト一次突起の形態と機能に役割を持つ可能性が示唆された。このポドサイトの脱チロシン化αチューブリンへのVasohibinの効果を検討するため、野生型、Vasohibin-1+/-、Vasohibin-2-/-マウスの糸球体における脱チロシン化αチューブリンを免疫染色により評価したところ、Vasohibin-1+/-マウスでは野生型に比べて脱チロシン化αチューブリンの染色性が低下していたが、Vasohibin-2-/-マウスでは野生型と差がなかった。このため、ポドサイトのαチューブリン脱チロシン化にはVasohibin-1が重要であることが示唆され、次に培養ヒト由来ポドサイトにおいてVasohibin-1をsiRNAによりノックダウンしたところ、対照と比較して脱チロシン化αチューブリンの減少が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎臓におけるVasohibinの新たな作用機序としてαチューブリンの脱チロシン化が重要である可能性を示すことができた。しかし、この過程にはVasohibin-1が重要であり、Vasohibin-2の発現の影響は未だ検証できていない。これには実際に尿蛋白を発生する糖尿病性腎症モデルやアドリアマイシン腎症モデルを使用した検討と、Vasohibin-1とVasohibin-2の各々のノックアウトマウスで尿蛋白を発生する動物モデルを作成した検討が必要であると考える。当初、Vasohibin-2のみを標的とした慢性腎臓病の治療効果の検討を考えていたが、本年度の研究からは、疾患や細胞によってVasohibin-1とVasohibin-2の一方のみが重要となる場合も存在する可能性があり、両者の蛋白質の発現を確認しながら検討する必要があることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はVasohibin-1及びVasohibin-2ノックアウトマウスで糖尿病性腎症モデル及び腎線維化モデルを作成し、脱チロシン化αチューブリンの発現がどのように変化するかを確認する。また、Vasohibin-2を標的とした慢性腎臓病の治療効果を検討するために、Vasohibin-2のペプチドワクチンを野生型マウスでの糖尿病性腎症モデル及び腎線維化モデルに接種し、マウスにより自己産生された抗Vasohibin-2抗体がこれらの病態の改善につながるか否かを検討する。更に、in vitro実験として培養ポドサイト及び線維芽細胞を使用して、高ブドウ糖刺激やTGF-β刺激による脱チロシン化αチューブリンの変化と、Vasohibin-1及びVasohibin-2の発現変化が及ぼす影響について検討する。
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