本研究では、蛋白尿と腎線維化の動物モデルを使用して、その病態に対するVasohibin-2優位のVasohibin-1/2不均衡の役割を検討している。 令和元年度までに尿蛋白に対する糸球体濾過障壁として重要なポドサイトの微小管を構成するαチューブリンが高度に脱チロシン化されており、ノックアウトマウスを用いた解析から、これはVasohibin-2よりもVasohibin-1によって制御されていることが示唆された。令和2年度は、このポドサイト微小管αチューブリンの脱チロシン化へのVasohibinの役割を解明するため、Vasohibin-1-/-マウスの腎臓の詳細な評価を行った。野生型マウスと比較してVasohibin-1-/-マウスは有意に高い尿蛋白と糸球体肥大が認められ、免疫染色ではスリット膜構成蛋白質nephrinの減少が観察された。糸球体への負荷を伴う蛋白尿発生モデルである高脂肪食負荷及び1型糖尿病モデルでは、いずれもVasohibin-1-/-マウスで野生型マウスよりも有意に高い尿蛋白の発生が認められた。このためVasohibinによるポドサイトαチューブリン脱チロシン化は糸球体濾過障壁の維持に重要と考えられた。 また、令和2年度はVasohibin-2を抑制する治療として、内因性抗Vasohibin-2抗体を産生するペプチドワクチンを入手し、糖尿病性腎症マウスに対するワクチン療法の実行可能性について検討した。8週齢雄性野生型マウスにStreptozotocin腹腔内投与により糖尿病を誘発し、高血糖の確認後からペプチドワクチンを2週間隔で2回接種した。糖尿病マウスにおいてワクチン接種開始から8週後に十分な血中抗Vasohibin-2抗体価の上昇が確認された。
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