研究課題/領域番号 |
18K08212
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
寺田 典生 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30251531)
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研究分担者 |
谷口 義典 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (70584431)
佐野 栄紀 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (80273621)
堀野 太郎 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (90448382)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腎臓 / 尿細管 / 急性腎障害 / 慢性腎臓病 / 虚血 / インターロイキン / サイトカイン / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
現在、透析療法に至っている患者数は、全国で33万人を越え、特に急性腎障害(AKI:acute kidney injury)は、患者の高齢化などにより発症頻度は高まり、全入院患者の約10%で発症し慢性腎臓病(CKD)に高率に移行し、腎・生命予後を低下させることが報告されてきており、その対策が急務である。本研究は、新規IL-1 family のサイトカインであるIL-36によるAKIからCKD移行への関与とそのメカニズムとして繊維化を検討した。私たちは遺伝子改変マウスを用いた実験と腎生検検体やAKI患者尿を用いた検討でIL-36がAKIの病態に関与し、尿中の早期診断マーカーになりうることを既に見いだしている。 我々は既にIL-36 受容体欠損マウスでは急性腎障害の予後が良いことを見出し、その機序として尿細管に発現するIL-36受容体から細胞内情報伝達系を介し、IL-6,TNF-aなどのサイトカインの産生が調整されていることを報告している。また我々はAKIの患者尿でIL-36が亢進する事とAKI腎生検組織でIL-36陽性細胞が出現する事を見いだし、IL-36系に注目した。またAKIからCKDに移行した患者の尿中のIL-36の測定が新規のバイオマーカーになり得るかを検討した。本研究では、AKIからCKDに移行するメカニズムに、IL-36がどのように関与するかを基礎的・臨床的手法を総合的に駆使して解明するとともに、AKIからCKDに移行した患者の尿中のIL-36の測定が新規のバイオマーカーになり得るかを検討する。さらにIL-36系はAKIだけでなく、乾癬やクローン病などのTh17系が関与する病態に広く関わっている可能性があり、臓器をこえた普遍性のある内容でその解明は重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では免疫細胞と尿細管細胞のクロストーク並びに、IL-36系がAKIからCKDに移行するメカニズム、特に腎組織の繊維化にどう関与するのかを遺伝子改変マウスと臨床検体の両方を用いて明らかにしている。私たちはAKIの患者尿でIL-36が亢進する事とAKI腎生検組織でIL-36陽性細胞が出現する事を見いだし、IL-36系に注目した(文献1:Kidney Int, 2018)。またAKIからCKDに移行した患者の尿中のIL-36の測定が新規のバイオマーカーになり得るかを検討した。本研究の独創的な点は遺伝子改変技術や細胞マーカーなどの技術を使用しつつ、豊富な臨床例での検体を蓄積してきた実績を生かして、基礎・臨床両面からAKIからCKDに移行するメカニズムの解明している点である。
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今後の研究の推進方策 |
AKIからCKDへの移行には現在有効な治療法がなく、その理由として診断のバイオマーカーが確立していない点がある。そこで本テーマではAKIからCKDへの移行した患者尿を用いたIL-36αの測定をおこない、早期バイオマーカーとしての可能性を症例数を増やしさらに検討する。AKIからCKDへの移行した腎生検検体を用いてヒト腎組織でのIL-36α,γの陽性細胞の同定と検出を行い、ヒトのAKIからCKDへの移行の病態でのIL-36系の関与を検証する。IL-36によるAKIからCKD移行のメカニズムを解明し、IL-36受容体抑制系の蛋白や抗体による新規治療法ならびに早期バイオマーカーとしての新規診断法を開発することにより、透析導入患者数の減少を目指したい。本研究の遂行による医療経済効果は計り知れない。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度、患者検体等のIL-36の測定で、比較的多数の検体測定を予定しており、試薬代がかかることが考えられるため。
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