研究課題/領域番号 |
18K08215
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中島 由郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30455430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / ネフロン癆 / ANKS6 / 超解像顕微鏡 |
研究実績の概要 |
申請者は、ネフロン癆の発生機序の解明を目的として「一次繊毛からの細胞内シグナル伝達経路」の分子基盤を確立することを目指している。ネフロン癆の責任遺伝子産物(NPHP)は主に一次繊毛に局在することが知られているが、NPHPのひとつANKS6(NPHP16)は一次繊毛のみならず、細胞質内での局在も確認されている。まず、詳細なANKS6の細胞内局在を知るために、マウス腎組織におけるタンパク局在を超解像顕微鏡を用いて観察した。具体的な成果としてANKS6とRNAヘリカーゼDDX6との二重染色を行ったところ、近位尿細管の細胞質内でANKS6とDDX6は共局在を示した。DDX6はRNAの分解や貯蔵に関わる細胞内顆粒P-bodyやストレス顆粒のマーカーとして知られている。このことからANKS6は一次繊毛だけでなく細胞質内においてRNA分解や貯蔵に関わる構造体にも局在し、RNA複合体を形成していることが示唆された。今後、ANKS6がP-bodyやストレス顆粒のマーカータンパクと相互作用していることをDuoLink PLAを用いてタンパク質間の相互作用を視覚的なシグナルとして定量することを試みていく予定である。 一方、ANKS6が一次繊毛と細胞質内RNA複合体の両方に局在が確認されたことから、この2つの異なる構造体間をANKS6が移動している可能性が示唆されている。これを証明するためにAPEXという酵素によるラベル化を応用した繊毛タンパク質ラベリング法によって試みている。こちらは実験の進捗が遅れているために、代替法も含めて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネフロン癆責任遺伝子産物ANKS6の局在解析では計画書以上の進展があった。超解像顕微鏡を用いた観察からANKS6が細胞質内でRNA結合タンパク質群と共局在していることが示唆され、このことはこれまでに報告のない重要な知見を得ることができた。 一方、ANKS6の細胞内動態を調べるための繊毛ラベリング法の立ち上げには当初の想定以上に時間を要している。具体的にはAPEXを一次繊毛に発現させるベクタープラスミドを作製し、遺伝子導入によって安定発現細胞株を樹立する工程である。目的の融合タンパク質が一過性に発現することは確認出来ていることから、作製したベクタープラスミドには問題がないことがわかっている。よって安定発現細胞作製のステップで、遅延が起こっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策については、概ね計画書通りに進行する予定である。繊毛ラベリング法の立ち上げについてのみ遅延が生じているが、各種検討により徐々に問題点は解決されていくと考えられる。もし、繊毛ラベリング法の遂行が困難となったときには、より実行可能な代替法を選択する予定である。具体的にはANKS6の一次繊毛から細胞質への移動の有無をANKS6と蛍光タンパクを融合させライブイメージングにより観察する方法を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の消耗品において当初の見込額よりも安価に購入できたものが数点あり、その結果として差額が生じることとなった。
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