ネフロン癆責任遺伝子産物であるANKS6は、一次繊毛の基部に位置するInvコンパートメントに局在する。ANKS6は、ネフロン癆関連遺伝子産物であるBICC1やANKS3と複合体を形成することがin vitroの実験などから示唆されてきたが、BICC1とANKS3は一次繊毛での局在が明らかになっていないため、ANKS6がin vivoでBICC1やANKS3と複合体を形成することは確認できていなかった。 当該年度では、マウス腎臓組織におけるANKS6の局在を共焦点顕微鏡によって入念に観察した結果、Invコンパートメント以外に一次繊毛の根元に蓄積するシグナルが認められた。この繊毛の根元に蓄積したANKS6のシグナルの局在を同定するために繊毛関連タンパク質と共染色したところ、ルートレットの主要構成タンパク質であるルートレティンとの共局在が認められた。BICC1とANKS3もANKS6と同様にルートレティンとの共局在が観察されたことからBICC1-ANKS3-ANKS6複合体のルートレット局在が示唆された。 次にBICC1-ANKS3-ANKS6複合体の全体像を知るためにマウス腎臓の組織抽出液をショ糖密度勾配超遠心法により分画し、ウエスタンブロット法及び免疫沈降法によって解析した。BICC1-ANKS3-ANKS6複合体はポリソームよりも大きな画分にも存在し、巨大な複合体を形成していることが示唆された。この複合体の構成要素には翻訳抑制に関わるRNAタンパク質群も含まれていた。またBICC1のmRNAがBICC1-ANKS3-ANKS6複合体に含まれることもRNA免疫沈降法によってわかり、BICC1をはじめとする標的遺伝子の翻訳抑制に働いていることが示唆された。 今後、BICC1-ANKS3-ANKS6複合体が標的とする遺伝子を次世代シーセンサーによって網羅的に解析していきたい。
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