研究課題/領域番号 |
18K08217
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
竹内 康雄 北里大学, 医学部, 教授 (60286359)
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研究分担者 |
竹内 恵美子 北里大学, 医学部, 講師 (00406935)
川島 永子 北里大学, 医学部, 助教 (90342774)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能特異的マクロファージ / 線維化 / 制御性細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、近年報告された線維化を促進する機能特異的マクロファージの分離と細胞移入を行い、尿細管結紮モデルなどの腎炎誘発モデルにおいて炎症局所にマクロファージを呼び込むのにNecrosis/apoptosis/Netosisなどの局所細胞の細胞死の形式の違いそのものが直接関係していることを示すことを目的としている。 本年度は炎症惹起マウスからの機能特異的マクロファージの分離および正常マウスへの細胞移入を行う予定であったため、すでに論文として報告されている細胞表面マーカーを用いて炎症惹起マウスの骨髄細胞、末梢白血球、炎症組織(腎間質)中の目的とした細胞の染色を行ったところ、報告された値より非常に高い割合で機能特異的マクロファージが検出された。また、細胞を抽出する組織によってマーカーの発現強度が異なったためこれらを同一細胞として扱うべきかが問題であると考え検討を重ねていたが、FACSの蛍光強度の微妙な検出感度の違いにより再現性が損なわれていることがわかった。機能特異的マクロファージの分離には複数色の蛍光色素による多重染色を用いるため一色の設定の違いでも他のマーカーの強度に微妙な影響が出ることがあるため現在ソーティングにたけたアドヴァイザーをおいて条件を検討中である。 一方、in vitroで、機能特異的マクロファージが死細胞と相互作用の結果、線維芽細胞に与える影響について検討する系においては、正常好中球とNADPH oxidase欠損好中球の違いが最も顕著に現れる条件の検討が進んでおり、培養液中のカルシウム濃度を下げることで正常好中球に効率的に炎症を惹起する酸化DNAを放出させることができることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、in vivoの実験として機能特異的マクロファージを腎間質炎症惹起マウスへ移入することにより腎臓の線維化が促進されるか否かをはじめに行う予定であったため、既報による機能特異的マクロファージの分離を再現しようとした。しかしながら、実際に報告されている論文通りのマーカーを用いて機能特異的マクロファージを染色してみたところ報告では全末梢白血球中に0.03%程度しか存在しないはずの機能特異的マクロファージが我々のFACSでは0.1~0.3%程度と絶対数が非常に多く、これらすべての細胞を機能特異的マクロファージとしてもいいかが問題となった。そこで、採取する臓器を骨髄や間質性腎炎を起こしている腎臓に変えての比較や、線維化が正常よりも激しく機能特異的マクロファージの絶対数が正常より多いというデータがすでに得られているNOX2のノックアウトとの染色の違いなどの比較を行うなどしていたため、得られた細胞が目的のものであるかを検証するのに時間がかかった。検討の結果、FACSに用いたマーカーや解析には問題はなかったが、同じサンプルを使用した場合でも解析に用いる機種が異なると得られる細胞の数が違ってしまうことがわかった。この違いは蛍光の検出感度が機種によって異なることによるものであり細胞そのものの違いではないため、報告された論文で使用されている機種のメーカーの協力を頼み、我々が使用している機種で同等の結果が出るように検出感度などの条件決定を行った。使用する機種によって結果に差が出ることは、本質的な科学上の問題ではないため、当初想定しておらず確認に時間がかかったが、条件決定を行った今後は問題なく研究を遂行できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、条件決定が順調に進行しているin vitroのassayから研究を進める。機能特異的マクロファージが死細胞と接触した後、線維芽細胞にどのような影響を与えるかについて当初の計画ではコラーゲン、αSMAの産生などで評価する予定であったが、最近になって転写因子PU.1の発現が線維芽細胞の極性の指標となることが報告されたため、これを評価の対象に加える。 in vivoのassayについては、sony imaging products& Solutions Inc.学術課の協力により既報と同等のマクロファージを分離できることがわかったため、遺伝子改変マウスの個体数がそろい次第、細胞移入実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、in vivoとin vitroの実験を関連させて進めていく予定であったが、in vivoの実験に用いる遺伝子改変マウスの繁殖が遅れたため、予定していたin vitroの実験を年度内に行うことができなかったため、次年度使用額が生じたが、in vitroの実験1回分程度で使用してしまう額であるので、マウスの個体数がそろい次第使用する予定である。
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