研究課題/領域番号 |
18K08218
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
徳山 博文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50276250)
|
研究分担者 |
脇野 修 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50265823)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 糖尿病性腎症 / PHD / HIF / 肥満関連腎症 / 3次元化 / mDia / Rho |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、肥満関連腎症・糖尿病性腎症の病態生理の解明と治療法の確立を目指し研究してきた。肥満関連腎症早期から近位尿細管細胞の肥大、空胞化がみられ、mDiaはそれら組織学的変化が観察される前から誘導されていた。後期においては、mDiaの誘導に代わりRhoキナーゼが誘導されるとともに、Cell Cycle制御因子のp27が抑制され、尿細管におけるCell Cycleはhyperplasticとなり、hypoplasticなcell cycleを呈する糖尿病性腎症と全く逆になることを見出した。さらに、肥満関連腎症モデルマウスでは、組織学的に糸球体のみならず尿細管が肥大し、尿細管周囲毛細血管(peri tubular capillary:PTC)は尿細管に対し密度が低下し、ピモニダゾール陽性を示し、相対的虚血状態であることを見出した。これまでは腎疾患における糸球体、尿細管、PTCの形態異常、および病態生理関連分子の発現は、全て腎臓組織2次元平面的・断片的観察に留まっていたため、肥満関連腎症の超早期における尿細管、PTC、関連分子の発現の微細な変化の観察、相対的立体構造(尿細管・PTCの相対的位置関係)の観察、経時的評価には限界があった。また、病態生理関連分子をターゲットとした治療介入時、糸球体、尿細管、PTCがそれぞれどのように変化するのか腎臓組織の改善過程、および病態生理関連分子の動態変化を経時的に観察することも困難であった。肥満関連腎症超早期から微細な組織学的変化がみられ、病態生理関連分子がすでに誘導されていることを考えると、これら変化を確実に感知し、以降の観察を経時的に行い、組織学的変化と関連分子の連関を明らかにするためには、2次元的観察に留まらず、3次元立体的イメージングによる詳細な観察が不可欠である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全身・全脳イメージングと解析技術CUBIC(Clear, Unobstructed Brain/Body Imaging Cocktails and Computational analysis)の技術を用い、これまで脳、心臓などの内部微細構造を観察することが可能となった。この技術を応用し、免疫組織化学・腎臓透明化・3次元イメージングシステムを構築し、肥満関連腎症の超早期から、近位尿細管細胞肥大、空胞化の形態変化、および尿細管・PTCの相対的立体構造を1個の細胞ごとに経時的に観察することを目指している。さらに、我々がこれまで明らかにしてきた糖尿病性腎症におけるSirt1、Claudin1の動態、および肥満関連腎症におけるmDia、Rho/Rhoキナーゼ、PHD2/HIF, 虚血部位の局在を3次元的に高い解像度で可視化し、定量化することを目指す。我々はこれまで、血液中の赤色色素ヘムなど生体色素の脱色などマウス腎臓イメージングが可能なまでの高度な透明化技術には成功している。しかし、病態生理関連因子である炎症性ケモカイン、血管作動性因子、および虚血部位の3次元可視化のための免疫染色が腎臓表層までにとどまっており、立体3次元的構造を明らかにできていない。この技術的問題解決のためにプロトコールを現在改良中である。
|
今後の研究の推進方策 |
肥満関連・糖尿病性腎症の病態生理をより詳細に明らかにし、早期診断指標の確立、新規治療法による早期治療介入を提示できる可能性があり、社会的貢献度は極めて高い研究と考える。腎臓透明化は実現しており、プロトコール改良による病態生理関連因子である炎症性ケモカイン、血管作動性因子の動態、虚血部位の映像3次元可視化・定量化を実現し、肥満関連腎症、糖尿病性腎症の全段階における微細な組織学的変化、病態生理関連分子の動態を明らかにする。 本研究は当初の予定通り、 1.肥満関連腎症・糖尿病性腎症全段階における組織学的変化、Rho/mDia・Rho/Rhoキナーゼ経路、PHD2/HIF経路、Cell Cycleの動態などを腎臓透明化、3次元イメージングにより可視化、定量化する。 2. 病態生理の重要因子であるRho/mDia・Rho/Rhoキナーゼ経路、PHD2/HIF経路に対する早期治療介入の確立。 3.微量アルブミン尿に代わる血液・尿中早期診断指標の開発。以上について引き続いて検討する。
|