研究課題
糖尿病性腎症の前段階である肥満関連腎症ですでに近位尿細管細胞肥大、空胞化、およびミトコンドリア形態異常が観察され、尿アルブミンのみならず尿細管障害マーカーの上昇がみられた。その病態生理に近位尿細管における低分子G蛋白Rho/Rhoキナーゼ経路の誘導、炎症性ケモカインの誘導が重要であった。また、肥満関連腎症早期から近位尿細管細胞の肥大、空胞化がみられ、mDiaはそれら組織学的変化が観察される前から誘導されていた。後期においては、mDiaの誘導に代わりRhoキナーゼが誘導されるとともに、Cell Cycle制御因子のp27が抑制され、尿細管におけるCell Cycleはhyperplasticとなり、hypoplasticなcell cycleを呈する糖尿病性腎症と全く逆になることを見出した(論文投稿中)。さらに、肥満関連腎症モデルマウスでは、組織学的に糸球体のみならず尿細管が肥大し、尿細管周囲毛細血管は尿細管に対し密度が低下し、相対的低酸素状態であることを見出した。さらに興味深いことに、肥満関連腎症の近位尿細管において、近位尿細管細胞肥大・空胞化より早期からリン脂質を含有した多量のライソゾームの蓄積がみられ、同時にオートファジー関連遺伝子mTOR、ATGなどの動態異常がみられた。肥満関連腎症早期において近位尿細管細胞肥大・空胞化が観察されること、肥満患者の近位尿細管細胞にリン脂質が貯留した多量のライソゾームの蓄積が観察されること、PHD2/HIF経路はオートファジー関連遺伝子を制御していること、以上から肥満関連腎症の病態生理として、早期からのオートファジー制御異常の存在があり、それに引き続いて組織低酸素状態、尿細管細胞肥大化・空胞化が引き起こされると考えられた。肥満関連腎症におけるオートファジー制御機構については不明な点が多く、今後さらに検討する必要がある。
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Scientific reports
巻: 11(1) ページ: -
10.1038/s41598-021-81027-8
J Am Soc Nephrol
巻: 11 ページ: -
10.1681/ASN.2020081188.