研究課題/領域番号 |
18K08223
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
森山 能仁 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (20439821)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カベオラ / アルブミン / セルトラリン / 糸球体内皮細胞 / 糸球体上皮細胞 / エンドサイトーシス / ダイナミン阻害 |
研究実績の概要 |
これまで我々はアルブミン尿の新機序としてカベオラを介し糸球体内皮細胞を通過する経路を解明・報告し、更にカベオラ経路を阻害することによるアルブミン尿の減少効果を狙う新規治療の解明を進めてきた。 2018年度カベオラが細胞内へ進入する際ダイナミンが関与することに着目し、ダイナミン阻害効果のあるセルトラリン(臨床では選択的セロトニン再取り込み阻害薬としてうつ病に使用)を使用し、糸球体上皮細胞・内皮細胞ともにセルトラリンの処理にてアルブミンの細胞内への取り込みが抑制されることを、Western blotting法、免疫染色法で証明し、更にピューロマイシン腹腔内投与ネフローゼ症候群モデルマウスがセルトラリン投与にてアルブミン尿が減少することを証明した。 2019年度はこの結果を発表、論文化を行い、論文化の際の追加実験としてセルトラリンの細胞内取り込み抑制効果が経時的に得られること、transwells plateを用い実際に細胞の反対側に排出するアルブミンがセルトラリンにて減少することを証明し、Am J Nephrolにacceptされた。また、論文とは別に学会発表の際に指摘された件として糸球体上皮細胞へのカベオラを介してのアルブミンの取り込み、細胞内通過経路の証明、ネフローゼ症候群モデルマウスとしてC57BL/6j miceを使用していたがBALB/c miceでの検討を求められた。そこで糸球体上皮細胞のカベオラを介するエンドサイトーシスの証明を行い、更にトランスサイトーシスとして微小管、アクチン、エンドソーム、ライソソーム、プロテアソーム、小胞体、ゴルジ体など細胞骨格やオルガネラの関与に関して解析を進めている。また、モデルマウスに関してはその他のmiceの使用とともにストレプトゾトシン腹腔内投与糖尿病性腎症モデルマウスの作成を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は2018年度からの継続のセルトラリンによるアルブミンの糸球体内皮細胞・上皮細胞の取り込み阻害、ネフローゼ症候群モデルマウスにおけるアルブミン尿減少効果の研究を進め、当初の目標である論文のacceptまで至った。 更に糖尿病性腎症モデルの作成、ゲニステインの治療効果に関しても計画通り着手し始めており、アルブミンの細胞内通過経路を明確にするためにアルブミンの免疫金染色による電子顕微鏡下の観察も進めており、さらに前述の通りこれまでの研究にて指摘された点に関しても同時進行で研究を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はストレプトゾトシン腹腔内投与糖尿病性腎症モデル、アドリアマイシン投与巣状糸球体モデルの腎症の確立を目指し、ピューロマイシン腹腔内投与微小変化型モデルと3つの腎症に対して、カベオラ抑制によるアルブミン尿減少効果を証明していく。 また、糸球体上皮細胞のカベオラを介する細胞内通過経路も明確にすることで、糸球体内皮細胞・上皮細胞におけるアルブミン尿の新機序を確立する。 これらの証明にはアルブミンの免疫金染色による細胞内通過経路の電子顕微鏡による観察が必要であり、この観察方法を確立すべく研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
残高を確認しながら研究費を使用しほとんと予定通りに進行したため概ね予算を使い切ったが、わずかに次年度使用額が余った。 来年度予定通り引き続きその他の腎炎のモデルマウスの作成、新たな薬剤としてゲニステイン、余裕があればその他の薬剤の効果の確認を行う予定であり、そのための予算に加える。
|