これまで我々はアルブミン尿の新機序としてカベオラを介し糸球体内皮細胞を通過する経路を解明・報告し、更にカベオラ経路を阻害することによるアルブミン尿の減少効果を狙う新規治療の解明を進めてきた。 2018-9年度にかけ、カベオラが細胞内へ進入する際ダイナミンが関与することに着目し、ダイナミン阻害効果のある選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるセルトラリンの使用により、in vitorで糸球体上皮細胞・内皮細胞におけるアルブミンの細胞内への取り込み抑制効果、細胞の対側へのアルブミンの排出量の減少効果とin vivoでピューロマイシン腹腔内投与ネフローゼ症候群モデルマウスに対するアルブミン尿減少効果を証明しアメリカ腎臓学会、日本腎臓学会にて発表し、Am J Nephrolに報告した。 2019-20年度にかけ、糸球体上皮細胞へのカベオラを介してのアルブミンのエンドサイトーシス、トランスサイトーシスとして微小管、エンドソーム、ライソソームが関連することとアクチン、プロテアソーム、小胞体、ゴルジ体は関連しないことを証明し、アメリカ腎臓学会にて報告した。 2020-21年度にかけては、電子顕微鏡で免疫金コロイドアルブミンの糸球体上皮細胞の縦断切片での解析を行い、アルブミンのカベオラを介するエンドサイトーシスからトランスサイトーシス、エキソサイトーシスを確認し、Biochem Biophys Res Communに報告した。 2021-22年度にかけては、カベオリン-1の活性化、カベオラエンドサイトーシスに関わるSrcキナーゼの阻害効果のある、大豆イソフラボンに多く含有される植物性エストロゲンであるゲニステインのアルブミンの糸球体上皮・内皮細胞内のエンドサイトーシスの阻害効果をwestern blotting、免疫染色、細胞内通過の阻害効果をtranswell plateを用いた実験で調べている。
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