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2019 年度 実施状況報告書

マイクロバイオーム解析に基づいた難治性嚢胞感染に対する革新的治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K08227
研究機関(財)冲中記念成人病研究所

研究代表者

星野 純一  (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (70725861)

研究分担者 森田 英利  岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70257294)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード多発性嚢胞腎 / 嚢胞感染症 / 次世代高速DNAシークエンサー / 細菌叢解析
研究実績の概要

昨年度は研究倫理の承認および、対象症例の糞便・唾液・嚢胞液採取法を確立し、さらに共同研究施設(岡山大学農学部)に安全に搬送するためのシステム作りを行ったが、本年度は共同研究者と協議を重ねながら、得られた検体の解析を行った。今回解析を行ったのは、2例(66歳女性、57歳男性)6検体。岡山大学に設置されている次世代高速DNAシークエンサーを用いて細菌叢のメタ16S解析を実施した。
その結果、いくつかの新しい知見が得られた。第一に、嚢胞液中は無菌でなく、様々な菌体が存在すること。さらに症例ごとに異なる特徴があることである。症例1ではClostridiaceae;g., Blautia, Enterobasteriaceae, Comamonadaceae;g.など10種類以上の多数の菌体の存在が示唆された一方、嚢胞感染・抗生剤加療を繰り返された症例2ではProteobacteria;f.が殆どを占め、頻回抗生剤使用による菌交代現象が嚢胞液内部にも及んでいる可能性が示唆された。
第2に、嚢胞液細菌叢は唾液・糞便とは大きく異なる細菌叢を有していることが強く示唆された。従来、嚢胞感染の発症機序として、嚢胞液培養・血液培養所見から、門脈由来の腸管細菌感染(bactorial translocation)が主因と考えられてきた。しかし今回の解析結果はその仮説を覆す結果であった。少数例の検討であり今後の更なる解析が必要ではあるが、従来の仮説を改めて行く必要がある。
この細菌叢の違いは嚢胞内・腸管・唾液環境の違いに寄与する可能性が高い。従って、今回の結果は、嚢胞液培養における適した培地を開発する重要性を示唆するものであった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は実際の症例の集積とNGSを用いた細菌叢解析に注力した。細菌叢解析の結果は従来の仮説を覆す結果であったが、同意を得られて採取可能であった難治性嚢胞感染の症例数が当初の目標に届かなかった。また腸管細菌叢解析の条件設定に当初の計画以上の労力と時間を要した。
近年多発性嚢胞腎ガイドラインが発刊され、多くの医療機関で適切な初期抗生剤加療の実施が可能となったため、該当症例が減少したことが影響した可能性がある。
また、我々の得た結果は従来の肝嚢胞感染機序(=bactorial translocation)説を覆す結果であった。当初計画していたノトバイオートマウスにより感染成立機序の確認試験の実施は再検討する必要性があるが、新たな知見を論文化準備中であり、上記の進捗状況を判断した。

今後の研究の推進方策

先述のように、今回我々が得た知見は従来の仮説を覆す極めて新しい発見であった。従ってノトバイオートマウスを用いた感染成立機序の証明や嚢胞感染予防法の探索については、研究計画を改める必要がある。
逆に今回得られた結果から、嚢胞感染の起因菌の検出に優れた培地の開発など新しい研究発展を考えていきたい。

次年度使用額が生じた理由

実施状況報告書に記載させていただいたが、今回の解析結果は従来の定説に基づいた当初の研究計画を覆す結果であり、研究計画の一部変更が必要となった。また本研究に同意を頂き嚢胞液・唾液・糞便の同時採取が行えた患者数が当初の研究計画を下回ったため、次年度使用額が生じた。しかし、当該年度に得た新発見は今後の研究発展にとって重要な知見であると考えており、本年度は昨年度の新知見に基づいた研究を遂行していく所存である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Renal Transcatheter Arterial Embolization for ADPKD2020

    • 著者名/発表者名
      Oda Y, Sawa N, Suwabe T, Hoshino J, Ubara Y
    • 雑誌名

      Kidney Int Rep

      巻: 5(4) ページ: 546-549

    • DOI

      doi: 10.1016/j.ekir.2020.01.014.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Factors Influencing Cyst Infection in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease.2019

    • 著者名/発表者名
      Suwabe T, Ubara Y, Hoshino J et al.
    • 雑誌名

      Nephron

      巻: 141(2) ページ: 75-86

    • DOI

      doi: 10.1159/000493806

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PKD1-associated autosomal dominant polycystic kidney disease with glomerular cysts presenting with nephrotic syndrome caused by focal segmental glomerulosclerosis.2019

    • 著者名/発表者名
      Oda Y, Sawa N, Suwabe T, Hoshino J et al.
    • 雑誌名

      BMC Nephrol

      巻: 20(1) ページ: 337

    • DOI

      doi: 10.1186/s12882-019-1524-6.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genotype-Clinical Correlations in Polycystic Kidney Disease with No Apparent Family History.2019

    • 著者名/発表者名
      Sekine A, Fujimaru T, Hoshino J et al.
    • 雑誌名

      Am J Nephrol

      巻: 49(3) ページ: 233-240

    • DOI

      doi: 10.1159/000497444.

    • 査読あり
  • [学会発表] サイトメガロ感染と真菌感染症を合併した常染色体優性多発性嚢胞腎による難治性嚢胞感染の剖検例2019

    • 著者名/発表者名
      水野 裕基, 井熊 大輔, 関根 章成, 川田 真宏, 星野純一 ら
    • 学会等名
      第49回日本腎臓学会東部学術集会
  • [学会発表] 常染色体優性多発性嚢胞腎を背景とする良性肝腫瘤の一例2019

    • 著者名/発表者名
      河野 圭, 木脇 圭一, 関根 章成, 川田 真宏, 長谷川 詠子, 水野 裕基, 星野 純一
    • 学会等名
      第49回日本腎臓学会東部学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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