研究課題/領域番号 |
18K08229
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今田 恒夫 山形大学, 医学部, 教授 (60333952)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | microRNA / 腎臓病 |
研究実績の概要 |
研究計画書に従い、1)ヒト腎生検症例における、腎組織病変・腎障害指標と腎組織・尿microRNAの関連、2)地域住民コホートにおける腎不全や心血管疾患発症リスク評価、について解析を行い、現時点までに以下の知見が得られている。 1)ヒト腎生検症例における検討:①腎疾患症例における尿中総microRNA量と腎病変の関連について、様々な腎疾患をもつ150症例の腎生検症例の尿からmicroRNAを抽出し、ほぼ全例で 尿中microRNAが検出可能であった。尿中microRNA濃度は尿蛋白と正相関したが、腎組織変化(糸球体内増殖性変化、硬化病変、間質線維化)との相関は有意ではなかった。 ②IgA腎症88例における尿中microRNAと腎病変・機能低下の関連:1年間の腎機能(推定GFR)変化と尿中総microRNA量の関連 を検討したところ、尿中総microRNA濃度は1年間のeGFR変化との関連は有意ではなかったが、尿中miR-192とmiR-200c濃度は、糸球体増殖性変化と有意な負の相関を認めた。 2)地域住民コホートにおける腎不全や心血管疾患発症リスク評価:地域住民における尿中Na排泄と血圧の関連について、尿中Na排泄が多いほど、血圧は上昇するが、腎機能低下が大きいほど、その関連は強まることを報告した((Watanabe S, et al. Clin Exp Nephrol 2019)。これらのことから、尿中microRNAの発現プロファイルが腎疾患の予後指標として検討対象となりうること、塩分摂取と血圧の関連に腎機能が影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト腎生検例における尿検体の収集と解析はおおむね順調に進んでいる。また、地域住民の予後に関する解析についても、成果が出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年年度は、前年度までの研究成果をもとに、主に、ヒト腎疾患症例、地域住民コホ-トを対象とした解析を行う。 ①ヒト腎疾患症例において、腎病変と腎組織・尿microRNAの関連を網羅的に解析する。当初計画した腎生検400症例まで、解析症例数 を増やす予定である。また、原疾患別に(糖尿病性腎症、IgA腎症、ループス腎炎など)分類し、総microRNA、個別microRNAと腎病変 、予後との関連を解析する。腎生検組織中microRNA定量・局在評価については、ISH法にて尿細管上皮優位のmicroRNA発現が示唆されており、さらにlaser microdissection(LM)法によるネフロン部位別切り出しで詳細に解析する。microRNAの網羅的解析:LM法またはexosome表面マーカー 標識による部位別サンプル採取が確立後にmicroRNAマイクロアレイ解析を行う。 ②一般住民・腎疾患コホートで尿microRNAまたはその関連物質が腎疾患・心血管疾患リスクのバイオマーカーとなるか検証する。尿検体からのmicroRNA抽出・評価件数をさらに増やし、腎機能(eGFR変化)、心血管疾患、生命予後との関連を検討する。 ③進行性腎障害動物モデルを用いた腎病変と腎組織・尿microRNA変化の関連の検証:上記①、②の進捗状況に合わせて、進行性腎障害動物モデルを用い、ヒト腎疾患症例で関連が示唆されたmicroRNA の関与を腎組織・尿検体で検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、検体の収集と選別、最適な解析条件を決定するための限定的な研究が中心のため使用額はやや少なめであったが、次年度は、繰越金を使用して、幅広く解析を行う予定である。
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